目に焼き付いた光景。


やっと辿り着いたキャンパス。

見つけたＦＣ。

見慣れた白。

愛しい横顔。

その奥に見えた黒髪。

俯いて涙を流す女性。

優しく見守る切れ長の瞳。

理解できぬまま走らせた紅子。


「ＦＣに…２人で？
でもそれだけじゃ」
「電話だってかかってきたもん！
あたしがいても切らないで…
廊下に出て話すんだよっ」
見るともなしに見えた液晶。
着信 広瀬絵里子の文字。

「えー…涼介さんが？
マジで？」
考え込むワタル。
泣き続けるあやか。

「昨日…言われたの。
会ってほしい人がいるって…
会ったら…別れようって言われちゃうんだ…」
「あやか…
そんなこと…ないと思うけど…」
自信なさげな声。

「だってこの前
ゆりちゃんに聞いた話と同じだもん！」
「ゆりちゃんって…」
「遠距離で…ラブラブだったのにっ
彼氏が二股してたの！
それでっゆりちゃんは捨てられちゃったんだよっ」
「あーこないだお礼参りに砂にした男か…」
頷いて嗚咽する女神。
そっと回り込んだワタル。

「でもさ…
きちんと話し合った方がいいよ。」
優しく撫でる薄茶の髪。
ゆっくりともたれかかってくる小さな肩。