「食べるもん。」
「入るよ？」
「うん…」
そっとトレイを受け取るあやか。
甘い香りが充満した部屋。
思わず息をのんだワタル。

「おいしい…」
「愛情がこもってるからね。
政子さんも心配してたよ？」
ふわふわのラグに座り口に運ぶおにぎり。
向かい側に座った武王の主任。
黙ったまま食べ続けるあやか。

「ホントに…
何があったの？
この前から少し変だよ？」
ひとつ目を食べ終えたのを見計らって切り出した話。
無言でコップを掴む小さな手。

「あやか？」
覗き込む薄茶の瞳。
今にもこぼれそうな雫。

「あやか…」
「あたし…捨てられちゃうかも…」
「はぁ！？」
驚きを隠さないワタル。
ぽろりとこぼれ落ちた雫。
さらりと揺れた薄茶の髪。

「なっなんでっ？」
「涼介さんにはっ
他に好きな人がいるんだよ！」
涙にかすれた切ない声。
白い太ももに次々と落ちる涙。

「ちょっと…待って。
考えられなくない？
涼介さんに限って」
「だって見たもんっ
ＦＣにっ２人で乗ってたもん！」
ワタルの声をさえぎる悲鳴にも似た声。

「えぇー！？」
「あたしなんか…
もう捨てられちゃうんだ…」
呟いて嗚咽するあやか。