「どういう事だ？」
呟いた独り言。
畳んだケータイ。

「着信拒否…なのか？」
呼び出し音も鳴らずに切れる電話。
数日前から感じていた違和感。
どこかよそよそしい女神。


メールの返事もない…

武王に行くしかないか。


部屋を出る涼介。
まず向かう隣のドア。
手早く２回ノックした手。

「んあ？」
「入るぞ。」
寝ぼけた声。
開けたドア。
大あくびの弟。

「あー兄貴…おかえり…」
「聞きたい事がある。」
「ん～？ききたいことぉ？」
ボリボリと頭を掻く啓介。
やっと起き上がった上半身。

「あやかと…連絡が取れない。
何か聞いてないか？」
「えー…だって…あ！」
言いかけて口を押さえた弟。
ぴくりと反応する涼介の眉。

「だって…なんなんだ？」
「いやっなんでもねぇ…」
冷たく呟いた兄。
目をそらす啓介。

「何か…知ってるのか？」
冷静な声。
感じる圧迫感。
また頭を掻いた手。
吐き出す大きなため息。

「知ってるからって…
俺から言うのはおかしいだろ。」
「何？」
「自分でなんとかしろよな。
大事な彼女だろ？」
投げやりな言葉。
呆れたような表情。

「そんな事は言われなくても分かってる。」