「あやか！？」
涼介が駆け寄った瞬間
海へと吹っ飛んだ男。

「サイドワインダーだな！
どこにいんのよっ」
仁王立ちで叫んだあやか。

「ぶげぼっぶはっ」
殴られて手放した意識を引き戻した海水。
死にそうに咳き込みながら立ち上がる男。

「あやか…」
自分を睨み付ける薄茶の瞳に身震いする北条。
その体内で確かに早くなった心臓の鼓動。

「ココで何してんだ…
ああん？」
怒りを押し殺すような声。

「あっいやっあのっかっ海水浴？
なっ夏だしな…」
露骨に動揺している口調。

「ふぅん…服着たままでか。
てめぇカナヅチだろーがっ！」
「ひいぃっすいませんっ
申し訳ありませんっ」
ブチ切れて怒鳴ったあやか。
飛び上がり土下座した北条。
ざぶざぶと北条を飲み込む波。

「いいか…
全員に通達しとけ。
今日…この浜に
昔どこかで見た顔がいたら
有無を言わさず砂にする。」
冷たく低く呟いた女神。
ポキポキと鳴らす指。

「はっはいっ
全員に通達しますっ！」
「豪…お前もだからな。
もし…また会ったら…」
「あわわっ
にっ二度と会いません！
大丈夫ですっ！
失礼しましたぁっ！」
鼻血を拭きながら走り去る北条。