「変わってないね～」
「そう？
ちょっとは改装したのよ？」
たどり着いたサーフショップ。
懐かしそうに店内を見渡す女神。

「早く着替えて海いきたいっ」
「こらこらっ
コイツに挨拶ナシか？」
カウンターの上に飾られた赤。


「あっ」

動きの止まったあやか。


不思議そうな顔の涼介。


「まだ…あったんだ。」

消え入りそうに呟いた声。


「捨てた方が良かった？」

問い掛ける優しい眼差し。

黙ったまま首を振る女神。

ゆっくりとカウンターに近付く小さな体。

そっとのびた指先。


「海紅子…久しぶりだね。」

囁いた甘い声。


「うみべにこ？」
「あやかのボードだよ。」
「あぁ
ボディボードをやってたって…」
「この浜で一番だったね。
もう…３年前になるかな？」
取り出すタバコ。
黙り込む涼介。

「あの字は？」
銀色の羅列。
消えかけた関東最速の文字。

「貴之が書いたんだ。
自分の大切な人に一筆書いてもらうと海で守られるって…
まぁゲン担ぎみたいなもんだね。」
「まだ消えてなかったんだね。」
寂しそうに笑って言ったあやか。

「貴之があんたを忘れるわけないでしょ。」
優しい声。