「あやか…」
信号待ちで停車した白。
そっとのばした左手。
優しく撫でる髪。

「ごめん…
言い過ぎた。」
ちらりと自分を見た薄茶の瞳。
まだとんがったままの唇。

「あやか？
許してくれる？」
髪を滑り肩を抱く大きな手。
やっとこっちを向いた愛しい人。

「キスしてくれたら許す！」
「えっ？」
不意に告げられた交換条件。
突然の展開に目を見開く涼介。

「ここで？」
「うんっ」
「今？」
「そう！」
テンポの良い会話。
赤くなった２人の顔。
目の前を行き交う人々。

しばしの沈黙。

「出来ないならいいもん！
んっ」
投げやりに言い放ち
再びとがらせた唇に重なる涼介の唇。
いつものやわらかさ。
いつもとは違う熱。
下唇を吸い上げて離れた顔。

「青だ。」
するりとほどけた腕。
つなぐクラッチ。
走り出す白。

「許してもらえたかな？」
前を見たまま呟いた涼介。
その横顔を見つめる赤い顔。

「うん…許してあげるよ。」
囁いた甘い声。
満足げな笑顔。
ハッとしたあやか。

「あっ！
さっきの信号
右だった！」
「えっ？」
「またやっちゃったよぅっ」
がっくりとうなだれる薄茶の髪。
小さく笑った涼介。