「あれ～？
なんかいい勝負じゃない？
もっとぶっちぎるかと思ったのに…」
「レコード作ったから手ぇ抜いてるんだ。」
「原田さんらしいや。」
思わず笑い出すケイゴ。
口をとがらせた女神。

「あたしにはいっつも
全開で走れって言うくせにっ」
「しょうがないよ。
いつものあやかはレコード狙いなんだから…」
言い聞かせるような優しい声。
穏やかな笑みを浮かべるワタル。
そっと手を伸ばし撫でる薄茶の髪。

「だからって」
「バトルにはいろいろ駆け引きもあるからね。
原田さんはテクニックだけじゃなくて
その駆け引きも一流なんだよ。」
「なんで？
ぶっちぎった方がいいじゃん！」
ますますとんがった唇。
おどおど話し出すケイゴ。

「帝王は…
あのエボのドライバーに期待してるんだと思います。
だから…わざと大差を付けずに
相手の闘争心をかき立てようとしてるんです。
たぶん前のレコードよりいい数字が出ると思います。」
「へんなのっ」
女神の一言に黙り込むケイゴ。
段々と近付いて来た２つの轟音。

「あ！ゴールしたっ
あれはどう見ても原田さんの勝ちだな。」
「たかにーに文句いってくる！」
駆け出すあやか。
慌てるワタル。