「どっ同着！？」
「引き分け！？」
口々に叫ぶレース結果。
納得した表情の１０人。
ますます不機嫌な女神。

「ぜったいわざとでしょ！」
「わざとなんてっ
でっ出来るわけないだろ！」
「たかにーなら出来るもんっ！」
自分を睨む薄茶の瞳。
吐き出したため息。
話し出した帝王。

「じゃあどうすれば良かった？
紅子のケツにくっついてるか？
事故覚悟で突っ込むか？」
「事故覚悟って…」
「抜かれそうになった時の反応は
俺よりえげつないからな。」
「えげつないって何よっ」
声を荒げるあやか。
心配そうな１０人。

「あやかは無意識なんだろうが…
紅子とユキの速度を計算して
抜かれないと分かってたから動かなかったんだ。
もし俺がほんのちょっとでもスピード上げてたら
間違いなくライン変えてただろ。」
「そんな…」
「それが分かってたから抜けなかった。
あやかのすごさと怖さは俺が一番よく知ってるからな。」
優しく笑って撫でる頬。
消えていく怒りの表情。
見つめ合う女神と帝王。

「たかにー…」
「相手をよく知ってるからこそ抜けない…
そんな事もあるんだ。
分かったか？」
「うん。」
頷く薄茶の髪。
赤くなった頬。