「なんでアツなんだ？
尚子は…」
「母さんはウチで引き取るって言ってた。」
ごくりとのんだ息。
少し紅潮した頬。

「でも…
ウチで引き取ったら…
あやかは俺の妹になっちまう。
そしたら…」
真っ赤になって黙り込む貴之。
優しく見守る武田。

「そしたら…
結婚できねぇ。」
「ん？結婚？」
消え入りそうな声。
意外な言葉に身を乗り出す文太。

「うるせぇなっ
守るっつったら結婚だろ！？
あやかは俺の女神なんだからな！」
真っ赤な顔で叫んだ貴之。
見開かれた文太の瞳。

「女神って！
アツっお前だな！
子供に変なこと教えてんじゃねぇぞ！」
「すいませんっ」
赤くなった文太。
頭を下げる武田。


『政子さんは俺の女神っすよ！』
武田の口癖。


「俺は子供じゃねぇ！
いいだろ！
俺があやかに惚れただけだっ」
「ほれっ」
真っ赤になった文太と貴之。
苦笑する１人。

「惚れたって…お前…」
「いいだろっ！
母さんだって父さんに惚れたのは１１歳の時だったんだぞっ！」
「あん？」
「ダンナは小学校の臨時教員だったんすよ。」
ぽりぽりと掻く頭。
あんぐりと口を開けたままの文太。
真っ赤になって黙り込む貴之。