「あ…」
目を見開いた拓海。

すらりとした少年に支えられて降りた少女。

細い足。

真っ白な腕。

さらさらと風に揺れる薄茶の髪。

長いまつげ。

薄紅色の唇。

暴れ出した拓海の心臓。

「ん？妹か？
２人もいたっけか？」
「いや…違います。
今度ウチで引き取る予定なんです。」
「引き取る？アツ…」
「武田！
どこにいんだよっ
めちゃくちゃはえぇ男って。」
文太の言葉をさえぎる貴之の声。

「ばーか。
この人がそうなんだよ！
伝説の走り屋、藤原文太さんだ！」
「バカにバカって言われたくねぇよっ
このバカ！」
すかさず放ったローキック。
苦悶の表情で座り込む武田。

「あっはっは！
尚子そっくりだなっ」
大声で笑い出した文太。
きょとんとするあやか。

「母さんを知ってるのか？」
「あぁ、お前が腹ん中にいた頃だけどな。」
睨みつけるような瞳。
頷いた優しい顔。

「お前って言うな！
俺の名前は原田貴之だ！」
「そうか。貴之か…
俺は藤原文太。
コイツは息子の拓海だ。
よろしくな。」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でる大きな手。
迷惑そうな顔の貴之。
あやかを見つめたままの拓海。
くりくりと動く薄茶の瞳。