目に焼き付いた２人の寝姿。


幸せそうな安らかな顔。


涼介の腕に包まれていた小さな体。


思わず噛んだ奥歯。


「たかにー？
どうしたの？」
首を傾げてのぞき込んでくる愛しい人。

我に返った貴之。

「なんでもない。」
「ふぅん…
あれっ？涼介さんは下？」
「えっ」
不意に出た名前。

動きの止まる武田。

きょとんとしたあやか。

「あいつのことはいい！」
「えっ？」
「もうあいつの話はするな！
忘れろっ」
「たかにー…」
びっくりした顔で武田を見るあやか。

あわてて目をそらす社長。

「なんで…？」
「あやか。
俺の言うことが聞けないのか？」
女神を貫く帝王の瞳。

黙ったまま首を振るあやか。

「忘れろ。
もうあいつはココには来ねぇよ。」
吐き捨てるように言ってあおるビール。

そんな貴之を見つめる薄茶の瞳。

「武田も食うだろ？
チャーハン。」
「あっあぁ。」
「政子さんの分も作っといた方がいいよな。」
「うん…頼む。」
ビールを片手に立ち上がった貴之。

腑に落ちない表情の女神。

思い出したように食べるヨーグルト。

テレビに目をやる武田。

やがて聞こえてきた包丁の音。