「史浩を移動か…
うーん。手たりっかなぁ？」
「ワタルがいるから平気だろ。
新人２人もスジがいいしな。」
リビングに戻りながら開ける大きな缶。

炭酸特有の音。

「飲むか？」
「飲めねぇよっ」
「そうだったな。」
ソファに座っていつもの会話。

まったく酒を受け付けない武田の体。

にやりと笑ってビールをあおる貴之。

「史浩は…」
「もう帰ったぜ。
ＦＣがないんじゃやる事ねぇしな。」
休日返上でＦＣに夢中だった史浩。

「そうか…」
俯く武田。

「電話しとけばいい。
少しは考える時間も必要だろ。」
言いながら取り出したタバコ。

顔を上げた社長。

「そうだよなっ
うん！電話してくるっ」
膝を叩いて立ち上がるゴツい体。

頷きながら開いたジッポ。

どすどすと事務所へ向かう足音。

「電話って…誰に？」
疲れた顔で現れた政子。

「史浩だよ。
省吾は寝たの？」
「あぁ…もー
なんであんなに夜泣きすんのかねぇ。」
目の下のクマ。

憔悴しきった表情。

「一緒に寝てなよ。
日曜だしさ。」
「うん…でも昼メシ…」
「なんとかするから大丈夫だよ。」
「そうだな…頼む。」
それだけ言うと戻る和室。