「なんなんだよっ
どっちが前なんだっ！？」
スピーカーに怒鳴る武田。
落ち着いた素振りでタバコをふかす文太。

『どっちが前って』
『ぎゃあぁっ
ありえねぇぇっっ』
絶叫にかき消される声。

「なんだよっ
なにが起こってるんだっ！？」
スピーカーを睨み付ける武王の社長。
こっそりと口角を上げた涼介。

『わっわっ信じらんねーっ
夢でも見たんじゃねぇの？』
『あんなん夢でもみねぇよっ』
『すごすぎる！』
会話に夢中らしいメンバー。

「おいっ実況はっ！？」
「もう過ぎたみたいですね。
次のポイントにかけてみます。」
冷静に言うとケータイをいじる涼介。

「あっ…あぁ、頼む。」
不満げな顔でため息をつく武田。
響く発信音。

「どうなってんだよ…」
不安を隠しきれないワタル。
そっと近付いて耳打ちする啓介。

「パラレル走行だ。」
「あん？なにっ？」
「２台ぴったり並んで走ってんだよ。」
「並んでって…コーナーは」
「ドリフトも並んで…だ。」
「あっ…
そう来たかぁ…」
ぐったりと脱力感に襲われる武王の主任。
笑って背中を叩く親友。

「そう…だよな。
あの２人なら…可能だ。
パラレルか…」
笑い出したワタル。