「あやかちゃん！？」
素っ頓狂な酒井の声。

「えっ」
固まった大輝。

「大輝…ありがと。」
俯いた目の前にある薄茶の髪。
顎の下から聞こえる甘い声。
胸に添えられた小さな手。
暴れ出した心臓。

「あやか…」
「あたしも大輝が好きだよ。
これからもずっと…」
見上げる潤んだ瞳。
くらくらとしびれる頭。
抱きしめたい衝動。

「今日はゆっくりできるから…
あとで一緒に走ろうね。」
「うん…ありがとう…あやか。」
涙をこぼしながら
精一杯の笑顔を見せる大輝。
そっと頬を撫でる長い爪。

不意に鳴り出した着信音。

「あやか、電話。」
「あっごめんね大輝。
ありがと。涼介さんっ」
手渡す小さなかばん。
取り出すケータイ。
目をこする大輝。
満足げな顔。

「もしもし。」
『あやかちゃん、久しぶり。』
「俊ちゃんっ久しぶり！
どうしたの～？珍しいね！
俊ちゃんからかけてくるなんて…」
『うん。
白い彗星と復活したって聞いて
どうしても聞きたいことがあって…』
「なぁに？
来週の遠征について行くつもりだよ。」
『おっそうか！
楽しみにしてるよ。』
「で？聞きたいことってなに？」