「冷たい…ん？…あれっ」
くるりと部屋を見回す拓海。
涙をこぼしながら
きょとんとするあやか。

「えっ！？あやかっ」
持ち上げた首。
見開かれた瞳。

「これっ…夢！
じゃない…のっ？えぇ！？」
きょろきょろと動く優しい瞳。
愛おしい声。

「夢じゃないよ…
たっくん。」
潤んだ瞳で微笑むあやか。
何度もまばたきする拓海。

「うそだよ…こんな…
あやかが俺の部屋にいるはずない。」
「あたしはここにいるもん。」
「うそだ…夢に決まってるっ」
「たっくんっ」
思わず動いた体。
拓海に抱きついた女神。

「あっ」
突然のぬくもり。
感じる確かな重さ。
懐かしい甘い香り。
息も出来ないほど苦しい胸。

「あやか…
ほんとに…あやかなんだね…」
「ごめんっごめんね！
たっくんっ」
首筋に落ちる雫。
鎖骨に感じる熱い吐息。
小さな体を抱きしめた拓海。

「あぁ…あやか…
会いたかった…」
「ごめん…ごめんね…」
涙にかすれる２人の声。
確かめ合うお互いの体温。

「たっくん…やせたね。」
顔を上げた女神。
涙でかすむ薄茶の瞳。

「部屋…そのまんまなんだね…
全部…片付けられてると思ってた。」