「若い頃にはよくあるもんだ。」
「うん…でもね…
あたし…血を吐いて倒れた時…
涼介さんを呼んだんだって…」
「えっ？」
「おかしいよね…
たかにーの声が聞きたくて
たっくんと一緒にいたのに…」
しゃくりあげるあやか。
かすれる甘い声。

「逃げ…だったんだな。
拓海とは…」
「にげ？」
「あぁ…あやかは本当に涼介が好きで
忘れられなかった。
だから拓海の声で貴之を思い出して
涼介を思い出さないようにしてたんだな。」
「そうなのかな…
やっぱりサイテーじゃん。あたし…」
「だから違うって言っただろ？
つらい時に隣にいて支えてやれたんだから
拓海だって苦しいなりに嬉しかったはずだ。」
「そうなの？
でも…」
「落ち着いたんなら本人に聞いてこい。
俺に拓海の気持ちはわかんねぇからな。」
ぽんぽんと優しく頭を叩く大きな手。
顔をあげたあやか。

「おとうふ…」
「食うなら食え。」
「うん…」
やっと離れた２人の体。
鼻をこする女神。
ティッシュを差し出す文太。
受け取る長い爪。


負担になるだろうから言わねえけど…

お前は

俺の愛した女…

拓海の母親の若い頃に

そっくりなんだぜ。


あやか…