「でも…あたし…」
噛みしめる唇。
下まつげに光る雫。

「あやか…話してみろ。」
「でも」
「大丈夫だ。
何があったってお前を嫌いになったりしねぇよ。」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でる文太。
こぼれた涙。

「あたしっ」
「全部…話せ。」
「あたし…たっくんの…
声を聞いてたかったの…」
「拓海の声？」
優しく尋ねる文太。
頷く女神。

「たっくん…
たかにーと同じ声なの…」
「なっ」
動きが止まった大きな手。


拓海の何がいいのか…

分からなかった。


声…

声だったのか！


「たっくんが…
苦しんでるの分かってたのに…
たかにーの声が聞きたくて…あたしっ」
「泣いていいんだぞ。」
ゆっくりと背中を撫でる温かい手。

切れた糸。

「文ちゃんっ」
「あやか…大丈夫だ。
泣いちまえ。」
文太の胸に飛び込んだ小さな体。
ぽろぽろと落ちる涙。

「声…だっていいじゃねぇか。
声が好きで付き合うってのもありだろ。」
「うん…
でも…あたしっ
いま…涼介さんと…付き合ってるの…」
「涼介？兄貴の方か…」
呟く文太。
頷く女神。

「サイテーだよね…
涼介さんと別れて…つらくて…
たっくんのそばにいたの…」