「たかにーが…」


「貴之には…

分かってたのかも知れない…」


「原田さんが…導いてくれたんだよ。」


優しく言ったワタル。

ハッとする女神。


「あやかが幸せになれるように…

本当の幸せをつかめるように…

あの手この手で

今この瞬間に導いたんだ。きっと…」


言い終わるとあふれた涙。

また泣き出す武田夫妻と史浩。

泣き出しそうな顔で涼介を見るあやか。

小さく頷いた涼介。

閉じた切れ長の瞳からこぼれる雫。


「貴之ぃ～っ

あやかは幸せになったぞぉっ

これからもっ

見守って…やってくれ…

うあぁぁっ」


泣き崩れる武田。

抱きしめて涙をこぼす政子。


「貴之っ…ありがとう。」


呟いて嗚咽する史浩。

泣き続けるワタルの肩を叩く啓介。


「死なないでね…」


消え入りそうなかすれた声。

そっと額に落とすキス。


「約束したでしょ？

俺は絶対に死なないよ。

あやか…愛してる。」


「うん…そうだったね…

愛してる。」


目を閉じて額を重ねる涼介。

混ざり合う涙。


幸せに満ちた部屋。


その日は皆にとって

大切な記念日になった。