「涼介さん…
おとといの夜、かけつけて…
ずっとずっとあやかのそばを離れなかったんだ。
ホント…勝てないよ。
もう完敗…」

泣きながら少し笑ったワタル。


「あっ俺、政子さんたちに連絡してくる！
近くのホテルに泊まってるんだ。
じゃあまた後でね！」


バタバタと遠ざかる足音。


訪れる静寂。


そっと手を伸ばして

触れた髪の毛。



もう…会っちゃだめだと思ってた。


二度と会えないと思ってた。


涼介さん…


ホントに涼介さんなの？


「ん…」


ぴくりと動いた肩。


「涼介…さん？」


遠慮がちに囁いた女神。


「あやか…」


懐かしい声。


ゆっくりと動く肩。


「ん…」


目をこする大きな手。


開いた切れ長の瞳。


「あっ」


視界に飛び込む薄茶の瞳。


動きの止まった涼介。


「涼介さん…」


「あやか…」


にじむ愛しい人の顔。


焼けるように熱い胸。


こみ上げる愛おしさ。


「あやか…」


頬をなぞる震える手。


懐かしそうに頬をすり寄せる女神。


「う…」


細い肩に額を付けて嗚咽する涼介。