「ところで…」
「ん？」
「なんで？」
小さな寝息をたてる男を指差すあやか。
大きく息を吸ってから話し出したワタル。

「慌ててココに駆けつけたら
トモさんに…呼ぶように言われたんだ。」
「トモちゃんが？
なんで？
トモちゃんは知らないはず」
「あやかが…呼んだんだよ。」

「あたしが？」

ゆっくりと頷いたワタル。

まっすぐな瞳。


「あやかは…
覚えてないの？」

「何が？」


見たこともない真剣な表情。

やけに耳に響く鼓動。

息をのんだ女神。


「気を失う直前…
あやかはこう言ったんだって。
『たすけて、涼介さん』って…」


「えっ…」


見開かれた薄茶の瞳。

少しつらそうな顔のワタル。


「トモさんが言ってたよ。
昔のあやかなら間違いなく貴之を呼んだだろうって…
悩んでたみたいだけど
これで答えが出ただろって。」


「うそっ」


「うそじゃないよ、あやか。
死んじゃうって思った時に
あやかは涼介さんを呼んだんだ。」


「だって…あたしっ」


「あやか…
いい？
こんなこと一度しか言わないよ。
よく聞いて。」

ベッド脇のイスに座ったワタル。