「うっ…げほっ…」
かすんだ視界に広がる赤。
口に広がる鉄の味。
襲い来る激痛。
初めて感じる死の恐怖。

「いたっ…いたいよぉ…
やだっ…こわいっ」
「あやか！
しっかりしろっ！」
涙をこらえてあやかの体をさする智幸。

「あやか！
大丈夫だっ！」
冷たい左手を握りしめる大輝。

「あやかちゃんっ
がんばれっ」
泣きながら叫ぶ酒井。

「いたいよっ…はっ…
も…死んじゃうっ」
「あやかっ」
乱れた呼吸。
真っ青な顔に浮かぶ脂汗。

「貴之ぃっ
連れていくんじゃねぇぞっ！
あやかっ生きるんだ！」
涙をこぼしながら叫んだ智幸。

「あやか！
すぐ救急車くるからなっ」
戻って来た東堂。

「あやかっ」
「やだ…よ…こ…わい…」
虚ろな瞳。
薄れゆく意識。

「あやか！
だめだっ！目を閉じるなっ」
「あやかちゃあんっ！」
「たすけ…て……んっ」
「あやか！？」
ぐったりと力の抜けた体。
わなわなと震える智幸の腕。
地面に残るたくさんの血痕。

「う…そだろっ？」
「あやか！」
「あやかちゃん！」
「いやだあぁっ！」


男たちの悲しい悲鳴は

真っ暗な空へ吸い込まれて行った。