あたしみたいに…

いろんな思い出がある女は幸せにはなれないのかな？


たかにーのこと

忘れるなんてぜったいムリだもん。


涼介さんのことだって

ホントはぜんぶ誰かに話したい。


あたしがぜんぶを話せるのは

紅子だけだ…


こんなあたしといても

たっくんは幸せじゃないよね。


もう…


終わりにしなきゃ…


悲しい決意。
じわりと滲む景色。
だいぶ傾いた日差し。
キラキラと輝く水面。
空になった缶に入れる吸い殻。


「たっくん。」

「ん？」

愛しい声。

ハンバーガーを手に自分を見る優しい瞳。


「もう…別れよう。」


口にした瞬間、襲いかかってきた絶望。

思わず噛んだ唇。


「えっ」

落ちたハンバーガー。

目を見開いてあやかを見つめる拓海。


「一緒にいても…
苦しいだけだよ。
あたしたち…」


言い終わるとあふれ出す雫。

右手で顔を覆う女神。

そのしなやかな動きに見とれながら
ただただ首を振る拓海。


「やっいやだよっ
ごめん！今朝のことだろっ？
もうあんなこと言わないからっ
たかにーの話も聞くから！」

嗚咽するあやか。

近付く拓海。