「ホントにいらないのか？」
「うん！まだオナカすかないし。
ポテトちょーだい。」
「あい。」
海岸沿いに駐めた赤。
ハンバーガーをほおばる拓海。
ポテトをつまむあやか。


『紅子でレインボーブリッジを渡りたい！』
あやかの一言でやって来たお台場。
人ごみを避けてたどり着いた海辺。


あやかが腹へらないって言うから

食うの我慢してたらもう三時…


食欲ないのかな？


缶コーヒーを片手にタバコをふかすあやか。
物憂げな顔。
朝から続く違和感。

「そう言えば…
禁煙なのか？紅子。」
「えっ？なんで？」
「だって…吸わないじゃん。
運転中…」
「そう？
紅子との会話に夢中だからかな？」
「会話？」
二つ目のハンバーガーを取り出す拓海。
タバコを口に運ぶ細い指。
キラキラと光る長い爪。

「うん…
紅子の声に耳を澄ませるの。
手で…足で…体全体で…
そして心で感じるんだよ…」

遠い目をして呟く女神。

思い出す声。


『あやか…
お前には聞こえるだろ。
そうだ…
もっと耳を澄まして…
紅子の声を聞いてやれ。』


たかにー…


あたし…


どうしたらいいの？


苦しいよ…