「今朝はこないだ言ってたうまいパン屋のパンだぞ。
どうした？あやか…」
元気に階段を降りてきた割に
妙に沈んだ表情。

「ううん、なんでもないっ
顔あらってくる！」
無理して笑うあやか。
ざわめく胸。
静かに降りてきた息子。

「なんなんだ？
２人して浮かない顔で…
天気もいいんだし
朝メシ食ったら出かけてこい！」
「あぁ…うん。
あやかも浮かない顔してた？」
「あぁ…何かあったのか？」
「いや…いいんだ。
俺が悪いんだ。」
さらに沈む表情。
よぎる嫌な予感。
戻って来たあやか。

「あっクロワッサンだ！
こないだ話してたパン屋さんの？」
「そうだ。
さっき行って買ってきたんだ。」
「限定だからすぐ完売だって聞いたよ！」
「ちょっと並んだけどな…
ほら、まだあったけぇぞ。
早いとこ食え。」
「は～い！いただきますっ
ホントだ！あったかい！
たっくんも食べなよ。」
「あぁ…」
「うわっさっくさく！
おいしぃ～っ」
クロワッサンをほおばり微笑むあやか。
つられて笑顔になる拓海。
そんな２人を見て胸をなで下ろす文太。

消えない予感。

的中する未来。


これがあやかとの
最後の朝食となった。