「あやか…配達いってくるね。」
寝ている愛しい人にそっと落とすキス。
ぴくりと反応した体。

「あやか？」
「ん…たかにぃ…」
思わず引いた手。
食いしばる歯。
聞こえる安らかな寝息。

「あやか…」
呟いて後にした部屋。

「今日はこんなもんだな。
ん？どうした？」
「なんでもねぇ…」
それだけ言って乗り込むハチロク。
残された文太。


なんなんだ？


最近の拓海は余裕がねぇ…


やっぱり


うまくいかねぇのかな？


俺のとうふなんかで

どうにかなる事じゃねえもんな。


あやか…


俺は…


お前の幸せを願ってる。


できることなら


拓海と俺で幸せにしてやりたかったけどな…


貴之。


お前は…


あやかの幸せの邪魔をしてんのか？


それとも


お前が導いてるのか？


拓海じゃ


あやかを幸せにする事はできねぇのか？


ぼんやりと吸うタバコ。
店先に止まる紅子。
もう見慣れた景色。

「あやか…
ココに…いてくれ…」
祈るように呟いて吐き出す紫煙。
沈んだ背中。
静かな朝。