「藤原…」
「はいっ」
「お前は…今のあやかを受け止めてやってくれ。」
「兄貴っ」
背中を向けたまま静かに言った涼介。
今にも泣き崩れそうな啓介。

「はい。
あやかは俺が守ります。」
決意に震えた声。

「それなら…もういい。
下で史浩を待ってろ。」
「涼介さん…俺」
「何も言うな。
早く行け。」
握りしめた拳。
微かに震える肩。

「藤原っ出てけよ！」
ドアを開けて怒鳴る弟。
歯を食いしばり潤んだ瞳で頭を下げる拓海。
追い出して閉めたドア。

「兄貴…」
「お前は部屋に行け。
落ち着いたら降りてこい。」
「ホント…ごめん。
俺のせいでっ」
「もういい。泣くな。
一人にしてくれ…」
「…分かった。」
静かに部屋を出て行く啓介。
大きく息を吐く涼介。

「う…くっ」
堰を切ったように溢れ出す雫。
吐き気に近い胸の痛み。
机についた右手。
噛む奥歯。


あやかっ


あやか…


会いたい。


声が聞きたい。


あやか…


俺が守りたかった。


俺が幸せにしたかった。


もう


あやかに会えない…


俺はあやかの重荷でしかない。


あやか


誰よりも


愛してる…