「やめろ、啓介！」
「あやかはお前なんか見てない！
その声を聞いていたいだけだっ」
兄の静止を振り切り怒鳴った啓介。
一瞬、曇った拓海の顔。

「違うっ！
俺はあやかを愛してます！
声だけなんかじゃないっ」
「そんなのお前が勝手に思ってるだけだろっ！？
あやかがそう言ったのかっ」
「啓介！」
「兄貴は黙っててくれ！
こんなうやむやなまま藤原と一緒にいて
それでホントにあやかは幸せなのかよ！？」
兄に言ってから拓海を睨む野生的な瞳。
唇を噛む拓海。

「いいか…藤原。
兄貴はあやかをあきらめたわけじゃねぇ。
お前といてあやかが幸せならそれでいいって…
身を引いてんだぞっ」
「え…」
複雑な表情で涼介を見上げる潤んだ瞳。
黙ったまま俯く涼介。

「兄貴はっ
俺やお前なんかよりっ
もっともっとあやかのことを想ってるんだ！」
野生的な瞳からこぼれる雫。
動きの止まった拓海。

「そんなっ」


涼介さんは…

そんなにあやかのこと…


でも

渡したくない！


あやかは俺のだ！


「あやかを…頼む。」
不意に聞こえた低い声。
ハッとする拓海と啓介。