「誰だ？史浩か。」
冷静に答える涼介。
鼻をすすって目をこする啓介。
ドアの向こうから聞こえた声。

「違います…藤原です。」
ハッとして目を合わせる兄弟。

「入っていいですか？
ちょっと話があるんで…」
いつもとは違う口調。
頷き合う兄弟。

「あぁ…入ってくれ。」
冷たく言った涼介。
開いたドア。
啓介の存在に気付き驚く拓海。

「で？話ってなんだ？」
ゆっくりとドアを閉めて
啓介を睨みつける瞳。
大きく息を吐いて口にした名前。

「あやかのことです。」
ぴくりと反応する２人。
冷たい目で２人を見る拓海。

「啓介さんにはもう言いましたけど…
あやかはもう俺のです。
涼介さんには渡しません。」
さらに冷たい目で見つめる切れ長の瞳。
少し俯いた涼介。

「分かってる。
取り戻そうとか…
奪い取ろうとか…
そんな事は考えてない。」
意外な返事に目を見開く拓海。
深呼吸した啓介。

「声…だけじゃねぇって言ったよな？」
「…はい。」
「それで…あやかはお前といて幸せだと思うか？」
「えっ？」
啓介を振り返る拓海。
まっすぐに拓海を突き刺す野生的な瞳。