「兄貴になら…まだしも…
藤原には負けねぇ！
兄貴が動かねぇなら
俺があやかを奪ってやるっ！」
「啓介っ」
「うるせぇよっ
兄貴はもういいんだろ！
口だすなよっ！」
「啓介！」
「何もできねぇくせに俺を止めるなっ！
兄貴はあやかのことっ
たいして好きじゃなかったんだろ！？
だったら遠慮なく俺がもらってやるよっ
うわっ！」
動いた兄。
ドアに叩きつけられた啓介。
胸ぐらを掴んで震える両手。
初めて見る表情。

「兄貴っ」
「お前にっ何が分かる！？」
怒りに震える声。
唖然とする啓介。

「俺は…誰よりもあやかを愛してる！
初めて会った時からっ
今だって！」


目に焼き付いた風景。

ライトを受けてキラキラと輝く薄茶の髪。

長いまつげ。

吸い込まれるような薄茶の瞳。

やわらかそうな薄紅色の唇。

何度も夢に見た不敵な笑み。


「あやかのためならっ
なんだってする！」
「だったらっ」
啓介を圧倒する迫力。
肩で息をする涼介。

「あやかが…幸せなら…
俺はどうなってもいい。」
緩む腕の力。
俯く兄。
呆然と立ち尽くす啓介。

「兄貴…」
「お前には…分からないだろ。
俺の…気持ちなんて。」