「拓海って…」
「ワタルは知らないか…
藤原とうふ店の文太さんの息子。」
「藤原とうふ店…
秋名のハチロクですか？」
「あぁ。そうだ。」
「じゃあ…啓介や涼介さんとも知り合いですよね？」
「だろうな…」
俯く武田。

「でもなんで急に拓海と付き合うことになったわけ？」
「好ちゃんの所で…偶然…」
「文太さんとこで会ったんじゃないのか。」
「うん…違うよ。
ホントに…偶然だったの。」
少し落ち着きを取り戻した女神。

「拓海は…知ってるの？
涼介や啓介とのこと…」
優しく問いかける政子。
小さく首を振るあやか。

「たっくんは…
何も言うなって…
ぜんぶ忘れろって言うの。」
「ふぅん…」
考えこむ政子。

「でもさ…
それって…どうかと思うんだけど…
俺的に…」
「ワタル的？」
自分を見上げる薄茶の瞳。
小さく頷くワタル。

「今まで…あやかには
すごくいろんな事があったでしょ？」
「うん…」
「でも…
忘れられるものでもないと思うし
過去も大事なあやかの一部だし…
だから、何も聞かないで忘れろって言うのは…
なんかおかしい気がする。」
ゆっくりと髪を撫でる大きな手。
じっと見つめ合う２人。