「そうかぁ。
あやかと涼介がなんで別れたのか
ちっとも分からなかったけど…
弟がからんでたとはねぇ～
頭で考えるより先に行動しそうだもんなぁ…あのタイプは。」
独り言のように呟く政子。
なんとも言えない顔のあやか。

「えっ？弟っ？なんで？」
アホな顔で妻と主任を交互に見る社長。

「そう！確かになんで？
弟が行動力ありすぎだって言っても
無理やりやるような男じゃないと思ってたんだけど…」
「それは俺も不思議に思ってた。」
耳元で優しく囁くワタル。
鼻をすすりながら顔を上げるあやか。

「あたし…寝ぼけてて…
涼介さんだと思ってたの…」
「寝ぼけっ！」
驚きのあまりに絶句する武田。

「そんな事じゃないかと思ってたよ。」
苦笑いしながら薄茶の髪を撫でるワタル。

「よくある事だよな。うん。」
「まっ政子さんっ！？」
「ばーか！結婚前の話だ！」
「そ…そっか…」
「で？そのあと
涼介とキチンと話し合ったの？」
静かな口調で尋ねる政子。
首を振るあやか。

「う～ん…
ちゃんと話し合った方がいいと思うんだけど？」
「でもいまあやかは拓海と付き合ってるんだろ？
それならそれでいいんじゃないか？」