「あやか…
俺の前で悪者にならなくていいんだよ。」
優しい声。
こぼれた雫。

「だって…」
胸がつまって出てこない言葉。

「もし…
本当にあやかに嫌われたんなら…
俺は武王をやめる。
俺のせいで苦しむあやかを見たくない。」
「ちっちがうよっ」
必死な否定。
熱い胸に添えられる小さな手。

「嫌いにっなんか…
なってない！
ただ…もう…
あたしには…ワタルに愛される資格がないからっ」
「ばかっ」
切ない声。
太い腕に包まれた小さな体。
伝わるぬくもり。

「うぉっ」
アホな武田の声。
あやかを抱きしめたワタル。

「なに…言ってんだよ！
資格なんて！
俺はっ…ありのままのあやかが好きなんだ。」
「だって…あたしっ」
「いいんだ！
何があっても！何をしても！
それがあやかなんだからっ」
「あ…ワタル…」
「ホントに…まったく…
何年好きだったと思ってんの？
ちょっとやそっとで…
なくなる気持ちじゃないんだからな…」
やわらかい薄茶の髪に頬ずりするワタル。
感触を確かめるように抱きしめ直す太い腕。
胸に感じる熱い吐息。
思いきり吸い込む甘い香り。