「なんだっ？
もしかして…あやか？」
店先に止まった赤。
不思議そうにのぞき込む文太。
現れたピンク色のサンダル。

「あやかっ
車かえたのか？」
「うん…」
「どうした？」
涙に濡れた顔。
俯いたまま首を振るあやか。

「あやか？」
「たっくんは？」
「部屋にいる…
何があったんだ？」
「ごめん…」
呟いて自分の横を抜けていく女神。
階段へ消える後ろ姿を見つめる文太。


あやか？

何があった？

高橋兄弟といろいろあったみてぇだけど…


拓海はお前のすべてを受けいれられるのか？


そんな度量は拓海にはない。

今だっていっぱいいっぱいだ…


俺は何もしてやれない。


ただ…

うまい豆腐を食べさせてやるだけだ。


タバコを取り出しつける火。
ざわざわと騒ぐ胸。
残された赤い車体。


「たっくん…」
ノックと共に聞こえた震える声。
慌てて身を起こす拓海。

「あやか？」
「たっくん！」
勢いよく入ってきたあやか。
飛び込む胸。

「あやかっ？
どうしたの！？」
「たっくん…」
抱きついてしがみつく小さな体。
優しくしっかりと抱きしめる太い腕。
いくつもこぼれる雫。