「帰って下さい。」
「なんだと？」
「これから…
あやかがココに来ます。
あなたと会わせたくない。」
「あやかが…来る？」
半信半疑な顔で拓海を見つめる啓介。


そんな…

あやかが来る？

こいつに会いに？


愛する人を奪われたショック。
また顔を見られる喜び。
複雑な表情。

「帰って下さい！」
「分かったよっ！帰りゃいいんだろっ」
タバコを口にくわえてＦＤのロックを解除。

「でも俺はあやかの事あきらめねぇからなっ
声だけで選ばれたお前になんか
ぜってぇ負けねぇ！」
斜めに睨みつけて冷たく言い放つ啓介。
一瞬、泣きそうな顔をした拓海。

「こ…声だけなんかじゃないっ！」
「声が同じだからに決まってんだろっ
どう考えたってお前なんかより兄貴の方がっ…」
ハッとする野性的な瞳。


どう考えたって…


兄貴の方が…


兄貴の方が…？


口をつぐんで黙り込む２人。
動いた啓介。
開けたドア。

「涼介さんにも伝えて下さい。
あやかは誰にも渡しません。」
「いやだね！
言いたきゃ自分で言え！」
紫煙と共に吐き捨てるように言う啓介。
回すキー。
下げるサイド。
踏む右足。
走り出す黄色。