「これってマツダの…」
「エイトだよ。
ＦＤの後継者。」
やっと振り返った女神。
微笑むワタル。

「うん…見たことある。
でも…」
「塗装はもちろんウィンズレッド。
初代紅子と同じだ。」
鼻高々な武田。
懐かしい深い赤。

「でもコレのどこが重要機密なんだよ。
フツーに走ってんだろ？」
「走ってるわけねーだろ。
水素ロータリーだぞ？」
「すいそ？」
「ガソリンに代わる燃料。
つまりコイツはエコカーなんだよ。」
「エコカー？ちゃんと早いの？」
「あやかが乗ればなんでも早いだろ。」
にやりと笑う武王の社長。

「このエンジンはまだまだ開発中で重要機密だ。
だから紅子のメンテは俺かワタルしかしない。
他の奴にはボンネットの中みせるなよ。」
「ふぅん…分かった。」
「あやか、はい鍵。」
ワタルが差し出した茶色いキーケース。
ボタンを押すと応えるドア。

「ナビ付いてんのっ？」
「まぁオマケだ。
データ取るのにハードディスク入れるから
だったらナビも付けましょうって事になってな。」
「データ？」
「今回はビッグプロジェクトなんだよ。」
乗り込むあやか。
のぞき込む２人。
小さな体を包み込むような感触。