「うっすげぇ！」
少しブレただけで減速もせず進む黒い影。
視界を遮るワイパー。

それでも

どれほど凄いかは一目瞭然だった。

「さすが…としか言いようがないな。
こっちも来るぞ！」
「あぁ。」
体に力が入る啓介。


あんな立ち上がりが出来るもんなのか？

これだけの雨の中で

浮き上がったオイルまで計算できるなんて…


「ちっ」
思わず舌打ちした涼介。

来た！


ブレる風景。
分かっていても噴き出す汗。

「くそっ」
とっさに動く右足。
なんとか持ち直した車体。


やっぱりダメだ。

スピードが落ちた。


あやかの立ち上がりとは…違う。


どうやったって…


かなわない。