「えっ？」
驚く彼。

「こんな音させながら走る車じゃないでしょ。
もっといい声…きかせて。」
シフトレバーに置かれた左手を見ながら言ったあやか。
あやかを見つめる切れ長の瞳。

「平気？」
「うん。」
頷いて微笑む薄茶の瞳。

直後に吼えるＦＣ。

同時に感じるＧ。

なめらかに動く左手。

風のように流れていくガードレール。

あの頃と同じ時間。


コーナーが見えて身構えるあやか。
予想通りに横に流れる景色。

懐かしくて少し笑った。

「初めて見たよ。
ドリフトして笑う子。」
「そう？
珍しいかもね。」
冷たく呟く声。
轟音の中での会話。