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スネハリ短編
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曇天の空から降りてくる真白の宝石は、ホグワーツを白銀に変える。
湖の中心に聳 え立つ断崖とそこに建てられたゴシック様式の大城、そして大城の周りを囲む大小さまざまな6つの塔で構成された由緒正しき魔法魔術学校。それらが白一色に塗り替えられていく様を見ることが出来るのは、冬季休暇を我が家で迎えられない孤独な者だけだ。
︎ それを見た者は口を揃えて「美しい」とため息を漏らし、あまりの優美さに目を奪われてしまうという噂のホグワーツ城。
︎︎陰険陰鬱と評されるセブルス・スネイプもその例外には当てはまらないのだろう。窓の外をじっと見つめるスネイプに、魔法界の英雄は思わず目を丸くする。
︎ 憂うようなその表情に目を奪われたハリーは、獅子寮に戻ろうとしていた足を暫 し踏みとどまらせた。好奇心は猫をも殺すとよく言うが、蕾をつけ始めた少年の恋心は止まることを知らない。誘われるようにスネイプの視線を追うとそこには立派な大木が木立 から孤立するように育っていて、空から振り落ちてくる白銀をその身に纏わせていた。眼鏡越しに照り映えた景色はハリーの目にも一際珍しく映り、グリーンの瞳がキラキラとそれを反射する。すると少年の熱視線に勘づいたのか、スネイプの顔がこちらへ向いた。
「ポッター」
︎ スネイプの表情が、憎しみによって色を変える。いつも通り粗大な歩幅でハリーを捕らえんとするスネイプの姿には、先程までの穏やかさが一欠片も感じられなかった。チクリと胸を刺す痛みに顔を顰 めたハリーは、脅すように近付けられた想い人の顔をそのまま睨み返す。
「何かご用ですか?」
「それはこちらの台詞だ」
刺々しい応酬は、からっ風に負けぬほどの寒気を周囲に撒き散らす。
「僕はただ、外の景色を見ていただけですよ」
︎ 鋭く尖る黒曜石の詮索から逃れるため、ハリーは窓の外に視線を向ける。変わらずそこに立つ大木はその白の深さをこんこんと重ねていて、厚くなっていく白銀のドレスは大木の存在感をより際立たせているように見えた。
「……まるで、ウェディングドレスみたいだ」
思いがけず漏れてしまったハリーの呟きに、スネイプが小さく肩を揺らす。その目には動揺が浮かんでいたのだが、大木に気を取られている少年は気付くことが出来なかった。そして少しの沈黙の後 、平静を取り戻したスネイプはハリーの関心を己に戻すため、一度大きく咳をする。目論見通りハリーが視線を戻すと、スネイプは嘲笑うかのように口角を吊り上げた。
「随分とロマンチックな言い方をされますな。その口の上手さなら、"お相手"も引く手数多であろう」
「……っ!」
明らかな挑発に、ハリーの頬が怒りで染まる。首元まで及ぶその紅色は白皙の肌へ艶めかしく広がり、それを舐めるように見つめたスネイプは目尻を細めて満足気に鼻を鳴らした。
「英雄殿は、女を口説き落とすテクニックも心得ていらっしゃるようで」
「違う!そんなつもりじゃ……!」
「では想像力が豊か、と言った方が宜しいですかな」
「……っ、」
喉まで出かかった罵倒を、ハリーは既のところで飲み込む。そんな彼にますます機嫌を良くしたスネイプは追い打ちをかけるため、彼との距離を一寸も無いほどに縮める。元々猫背だった背を少年の目線に合わせてやるため更に屈め、 黒塗りの上品そうな靴は使い古した靴のソールへまるで寄り添うかのように擦り付けた。
ともすれば口付けさえ可能な距離に、少年は息を詰める。
「ポッ──」
思春期を迎える年頃の少年が、その抗い難い誘惑に耐えられる筈がない。
ちゅ、と軽やかな音を立てたお互いの唇に、二人は揃って目を見開いた。スネイプは今起きた出来事に理解が追いつかず、ハリーは自分の凶行に頭が回らず、信じられないとばかりに瞳孔が大きく広がり、その視界にお互いの顔が映り込む。
「「……」」
一秒も立たないうちに犯人は逃げ出した。その様は、まるで大蛇に追われる子猫の走りだった。一方、スネイプはまるで足を縫い付けられたかのようにその場に立ちすくみ、頭どころか四肢五体すべてを冷やした。ようやっと事態を理解した時には全身霜焼けで、スネイプは震える身体を両腕で擦り合わせながら窓の外を見る。現実逃避であった。
しかし、そこに孤立する白銀の大木がスネイプの追憶に氷柱を落とす。
「……まるで、ウェディングドレスみたいね」
︎︎追憶の中で、赤髪の少女が微笑んだ。
冷えたはずの身体が、少しだけ熱を上げた。
湖の中心に
︎ それを見た者は口を揃えて「美しい」とため息を漏らし、あまりの優美さに目を奪われてしまうという噂のホグワーツ城。
︎︎陰険陰鬱と評されるセブルス・スネイプもその例外には当てはまらないのだろう。窓の外をじっと見つめるスネイプに、魔法界の英雄は思わず目を丸くする。
︎ 憂うようなその表情に目を奪われたハリーは、獅子寮に戻ろうとしていた足を
「ポッター」
︎ スネイプの表情が、憎しみによって色を変える。いつも通り粗大な歩幅でハリーを捕らえんとするスネイプの姿には、先程までの穏やかさが一欠片も感じられなかった。チクリと胸を刺す痛みに顔を
「何かご用ですか?」
「それはこちらの台詞だ」
刺々しい応酬は、からっ風に負けぬほどの寒気を周囲に撒き散らす。
「僕はただ、外の景色を見ていただけですよ」
︎ 鋭く尖る黒曜石の詮索から逃れるため、ハリーは窓の外に視線を向ける。変わらずそこに立つ大木はその白の深さをこんこんと重ねていて、厚くなっていく白銀のドレスは大木の存在感をより際立たせているように見えた。
「……まるで、ウェディングドレスみたいだ」
思いがけず漏れてしまったハリーの呟きに、スネイプが小さく肩を揺らす。その目には動揺が浮かんでいたのだが、大木に気を取られている少年は気付くことが出来なかった。そして少しの沈黙の
「随分とロマンチックな言い方をされますな。その口の上手さなら、"お相手"も引く手数多であろう」
「……っ!」
明らかな挑発に、ハリーの頬が怒りで染まる。首元まで及ぶその紅色は白皙の肌へ艶めかしく広がり、それを舐めるように見つめたスネイプは目尻を細めて満足気に鼻を鳴らした。
「英雄殿は、女を口説き落とすテクニックも心得ていらっしゃるようで」
「違う!そんなつもりじゃ……!」
「では想像力が豊か、と言った方が宜しいですかな」
「……っ、」
喉まで出かかった罵倒を、ハリーは既のところで飲み込む。そんな彼にますます機嫌を良くしたスネイプは追い打ちをかけるため、彼との距離を一寸も無いほどに縮める。元々猫背だった背を少年の目線に合わせてやるため更に屈め、 黒塗りの上品そうな靴は使い古した靴のソールへまるで寄り添うかのように擦り付けた。
ともすれば口付けさえ可能な距離に、少年は息を詰める。
「ポッ──」
思春期を迎える年頃の少年が、その抗い難い誘惑に耐えられる筈がない。
ちゅ、と軽やかな音を立てたお互いの唇に、二人は揃って目を見開いた。スネイプは今起きた出来事に理解が追いつかず、ハリーは自分の凶行に頭が回らず、信じられないとばかりに瞳孔が大きく広がり、その視界にお互いの顔が映り込む。
「「……」」
一秒も立たないうちに犯人は逃げ出した。その様は、まるで大蛇に追われる子猫の走りだった。一方、スネイプはまるで足を縫い付けられたかのようにその場に立ちすくみ、頭どころか四肢五体すべてを冷やした。ようやっと事態を理解した時には全身霜焼けで、スネイプは震える身体を両腕で擦り合わせながら窓の外を見る。現実逃避であった。
しかし、そこに孤立する白銀の大木がスネイプの追憶に氷柱を落とす。
「……まるで、ウェディングドレスみたいね」
︎︎追憶の中で、赤髪の少女が微笑んだ。
冷えたはずの身体が、少しだけ熱を上げた。
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