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「僕が人の心を失 くしたその時は、先生が僕を殺して下さい」
それは、ハリー・ポッターの口癖だった。
割れた舌先をチロリと唇に這わせ、彼女らしからぬ妖艶な笑みでこちらを誘惑せしめんとするその姿は、在りし日の闇の帝王を彷彿とさせた。
私は、そんな彼女の要望を一度としてマトモに取り合ったことはない。ときにお得意の嫌味で話の方向を捻じ曲げ、ときに人の心とは如何様なものを指すのかと屁理屈を捏ね、彼女の願いを蔑 ろにしてきた。多くの者に臆病者とさんざ罵られてきた私であるが、この時ほど自分の小胆さを自覚したことはないだろう。
「先生」
人間とは理性ある獣である、という言葉は誰のものだったか。理性の有無で存在を測るなんぞ、力無き弱者の偽善に過ぎないと見下していたのだが、今思えば的を射た言葉なのかも知れないと最近は思えるようになった。
他者を否定するばかりだった己がここまで変わるなんて、と自嘲的に片方の口角を上げる。それもこれも、彼女に影響されてしまったが為だ。清らかな善性を心の内に宿す彼女を、心の底から愛してしまったからに違いなかった。
「スネイプ先生」
死に際の声が、耳に付いて離れない。
彼女を殺したくなどなかった。
人は皆、獣に過ぎないのだから。人の心すなわち理性とは、他人の裁量で決められるほど単純な造りをしていないのだから。
だから、彼女が死ぬ必要はなかった。私が終わらせる必要はなかった。
「ころしてください」
しかし、それは彼女の達 ての願いだった。
それは、ハリー・ポッターの口癖だった。
割れた舌先をチロリと唇に這わせ、彼女らしからぬ妖艶な笑みでこちらを誘惑せしめんとするその姿は、在りし日の闇の帝王を彷彿とさせた。
私は、そんな彼女の要望を一度としてマトモに取り合ったことはない。ときにお得意の嫌味で話の方向を捻じ曲げ、ときに人の心とは如何様なものを指すのかと屁理屈を捏ね、彼女の願いを
「先生」
人間とは理性ある獣である、という言葉は誰のものだったか。理性の有無で存在を測るなんぞ、力無き弱者の偽善に過ぎないと見下していたのだが、今思えば的を射た言葉なのかも知れないと最近は思えるようになった。
他者を否定するばかりだった己がここまで変わるなんて、と自嘲的に片方の口角を上げる。それもこれも、彼女に影響されてしまったが為だ。清らかな善性を心の内に宿す彼女を、心の底から愛してしまったからに違いなかった。
「スネイプ先生」
死に際の声が、耳に付いて離れない。
彼女を殺したくなどなかった。
人は皆、獣に過ぎないのだから。人の心すなわち理性とは、他人の裁量で決められるほど単純な造りをしていないのだから。
だから、彼女が死ぬ必要はなかった。私が終わらせる必要はなかった。
「ころしてください」
しかし、それは彼女の
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