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最低条件は最高難易度

「……うん?」
「……あ」
今何と言った、露原は。しまった、と口を抑えているから聞き間違えではないようだ。
露原が、好きな奴と、言いましたね。これは言い逃れなく僕のことだろうね、チラチラと顔を赤くし僕の様子を見ているし。
露原がぼくを。不良と呼ばれる彼が、クラスで浮いている本の虫で誰にも話しかけないしかけられてもスルーするぼくを、好き、と。……うん。

「引くわ」
「だから言いたくなかったのに!!良いだろ!黙ってやるから付き合えとかヤらせろでもなくて、話しかけられたら話して、なんてささやかな願いだろ!
脅さなかった俺を褒めろ!これがほかの奴だったらここぞとばかりに漬け込んでくるからな!!そのぐらいいいだろー!」
「……」

ここまで取り乱した人を初めて僕は知りました。哀れになってきますね。…あー…僕がそうさせてしまったんだよね。
こんな社会不適合者予備軍を好きになるなんて変わった感性の持ち主だ、趣味悪いとも思う。好きということにはさほど引いてはない、ただ僕を好きということが引いただけだ。
でも、確かに露原の言う通りまぁ普通良い脅しにされるよな。付き合えとも身体だけでもと言えるのにな。それに比べ随分と物凄い些細な願いだ。まぁ…うん。

「わかった。本読んでて聞こえないときもあるけど、まぁさっきみたいに大きな声を出せば反応する。それでもいい?」
「…いいのか?」
「じゃないとバラされるんでしょ」
「そうだけど、え、本当に?」
「男に二言はないよ」
「…やった!空野、いや美夜!これからよろしくな!!」

早速名前呼びをされた。そこまで許可してないけど、まぁ名前ぐらい良いか。普段僕を呼ぶなんて日向ぐらいだし、空野だと反応しないだろうし。普段呼びなれてないからね。
それに、こうして喜ばれるのは、まぁ悪くない気分だし。あーっと、露原の下の名前…うん、思い出せた。
僕のことだけ名前で呼び捨てだと周りから見たらパシリだろうから呼び方ぐらいは対等にしよう。
それにしても脅しているほうがこんなに喜ぶなんて不思議なもんだね。

「うん、時雨。」

よろしく、というのはさすがにおかしいと思ったから肯定と彼の名前だけ言った。
それを聞いた時雨は、一瞬目を見開いて俺を凝視した後、それはそれは嬉しそうに笑う。

「脅しじゃなく普通に付き合えるよう俺頑張るわ」

…それを聞いて少し後悔したけど、彼の要求自体は控えめなことを幸いとしよう。
双子の弟との約束以外にまた一つ約束が増えてしまった。


そういえば、僕らの見分けがついている人しか付き合っちゃダメという、最低条件で最高難易度を誇っていた第一条件を突破したことを時雨に言わなかったけどまぁいいか。
あとは、まぁ僕の気持ち次第なんだろう。時雨に絆されている気も正直するけどもうちょっと粘ろう。




結論を言えば僕と時雨は付き合うことになるし、予想以上に俺のことを好きな日向が時雨と殺し合いに近い喧嘩をしたり、また日向と僕の見分けをつく人が現れて日向に言い寄る男が現れて次はその人と僕と殴り合いになるわけなんだけど。

まぁそれはまたいつかのときにでも、話そうかな。じゃあね。
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