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最低条件は最高難易度


露原の話を聞いていくと心当たりが一つあった。
中三のころである。帰り道何やら不良がいたか?!いない!だの騒いでいたことがあった。丁度日向は委員会とかで僕一人で帰っていた時だ。
うるせぇな、と思っていたらそこのお前、血塗れの奴は見なかったか?と聞かれたんだ。
あー、と下を見れば滴っている血は俺の目の前のそこで不自然に途切れていて、ちらっとビルのスキマのほうを見たら大きなゴミ箱の裏に顔こそわからなかったれど誰かがいて確かに目が合った。
低能すぎるんだろ、こいつら。もしかしてギャグなのだろうか、と思いつつ、本当にギャグなのか確認しよ、と思ってあっちで身が重そうな人とすれ違いましたよーと来た道を指さして棒読みで答えたらそのままの方向に行ってしまった。
あの真剣具合からするとギャグではなく、ただの低能だったか。心の中で納得した。
「なんか行っちゃったけど、警察とか病院呼ぶ?」
「…いや、いい。」
「そ、じゃあ僕行くね。戻ってくる前に何とかしたほうがいいよ」
面倒ごとには巻き込まれたくないし、もし戻ってきた奴らと会ったらうそを言った僕に何かと因縁を付けられそうだったから僕は速やかにそこを去った。
その後彼はどうなったのかどうでもよくてすっかり忘れていた。


「思い出してくれて何よりだ。」
「あー…ご無事でなにより??」
「思ってもいないことをよく言えるな、基本他人に興味ないだろ」
「まぁね」

よくご存じで、と言えば、ずっと見てたからな、と返された。ううん、その言い回しは正直引く。
まぁあれだけ僕を客観的に見てれば確かにわかるね。だっていつも一人で本読んでいるんだもん、たまに話しかけてくれる人がいるかもしれないけどイヤホンしてるから聞いていないし。
クラスでは正直僕は浮いているんだろうね。

「じゃあこれで用は済んだね、僕は戻ります。」
「おー…あ、もしかしてよ、お前らが入れ替わってるのって誰にも言わない方がいいのか?」
「うーん…言わない方がいいのかな…」
「…俺が聞いてんだよ」
「じゃあ言わない方がいいってことにしよう」
「…じゃー言わない代わりに俺に話しかけられたら返事しろよ」

…うん?ここは無償で言わないで僕に関わらないでいてくれる流れじゃないの?
おかしな流れが出来てない?とぎこちなく露原のほうを振り返る。
食えない笑みを浮かべ、僕を見てる、その目は獲物を狙っている目である。この豹変っぷりは何事なんだろうか。

「確かにお前の嘘で俺は助かったが、もう礼を言ったしこの件は終わったんだろ?済んだってお前が言ったもんな。
入れ替わったのを内緒にしてやる代わりに俺に話しかけられたら話してくれよ、良いだろ?」
「正直面倒くさいんだけど」
「…お前って結構肝座ってるよな…、大人しそうなくせして俺みたいなのに普通の口調で話しかけてくる。しかも馬鹿正直に」
「それが気に食わないからパシリにすると」
「いや!なんでそうなるだよ、この流れで。」
「この流れだからそう思ったんだけど、違うんだ。…あーそれならサンドバックに…」
「だから、発想が物騒になるんだ!」
「痛いのは嫌だからそうなるなら喧嘩を買います、やられる前にやらないと…。」

「だから!好きな奴にそんなことしねえよ!!」
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