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結局そんな人は中学にいるときに現れず(日向は彼女とそのあとすぐに別れたようだった)、別々の高校に行った今でも時々互いの変装をした。
日向は自分のことをちゃんと見分けてくれる人を待っていた。
僕は、相変わらず一人でも何とも思わなかった。正直見分けてくれる人がいなくても興味なかったし、正直日向のフリをするのは疲れるなぁとも思ってる。
それでも日向の提案を拒まないでいるのは、あのとき断っていれば、という罪悪感もあったし、もしも、万が一気付いている人がいるのなら話を聞いてみたいと思ったから。どうやって見分けたのか、て。
それを日向の彼女に求めていた。だから僕は日向の約束通りにした。
そう、僕は、日向に、求めていた。

入れ替わっていないときに告白されたら何日か保留にして、その日程を決めて互いの変装をしてそのことに気が付かれたら付き合うか付き合えないか考えよう。
入れ替わっているときに告白されたら問答無用で断る、と後々に決めた約束。
まぁ告白されるのは日向だけで、僕に告白する人がいたら逆にどうして、と聞きたいぐらいだ。
たまにウィッグを付けて日向のフリをするだけ。
日向は断ることが多いので大変だな、と適当に僕は言っただけ。
なんで美夜は告白されないの?俺と同じ顔なのに。と心底不思議そうに聞くけど、答えは決まっている。
「僕が誰かといないで1人でずっと本を読んでるからだよ」
うわぁ出た、と言わんばかりの嫌な顔をされた。相も変わらず互いのこの辺だけはどうも分かり合えない。
まぁ良いけどね。
「今日告白されたから断っておいたよ」
「…りょーかい。ちなみになんて言ってた?」
「あーずっと日向くんを見てた的な?」
今日は入れ替わって互いの高校に行く日だった。
入れ替わった日に告白されたことを一応報告しておく。告白の内容を伝えればしかめっ面で
「見てたのにわかんないんだな」
と冷たく言った。絶対に学校では見せない顔だろうなぁと思う。
いつも明るく笑うクラスの中心的な存在の日向。そんな彼は今凄く冷めた目をしている。
あの一件以来愛の告白に対する態度がすっかりこの調子だ。最近では恋愛ドラマで「どんな姿でもきみを愛する」的な台詞に対して「本当かよ」というぐらいになっているから悪化しているのかもしれない。
気が付かなかったけど、どんな姿でも俺に気付いてほしいって言うロマンチスト気質なのだろうか。
それはどうなのか、とも思うけど、日向以外に両親を含めて親愛を向けられず、初恋どころか友愛すらも芽生えたことのない僕よりは健全だろうから僕は何も言わないし言えない。
日向ばかり見ていた僕だけど、日向が本当に考えていたことを知らずにいた。
だってまさか、日向がこう思っているなんて思わないだろう。

誰か美夜を本当に愛してほしい、そして美夜も誰かを本当に愛していてほしい。なんて。

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