ヒプノシスマイク♡プリキュア
◆Buster Bros!!!プリキュア
今日の依頼は猫探しだ。
不本意ながら二郎と共に行動しているが、一兄に任された仕事なので完璧に遂行しようと思う。
「茶トラで鈴を着けた猫…なんて正直多過ぎて分かんねぇよな〜。写真でもあればワンチャンあったのに」
僕の隣を歩く二郎が愚痴り始める。
昨夜届いたメールには茶トラ猫の捜索依頼のみが書かれていて、写真などは添付されていなかったのだ。
「それでも見付け出すしかないだろ。一兄が僕達を信じて託してくれた仕事だぞ。ま、無理って言うなら二郎は帰れば良いさ。この依頼は僕ひとりでも余裕だしね」
「あぁ!?無理とは言ってねぇだろ!三郎こそ帰ってPCとにらめっこでもしてろ!」
「あーはいはい。あんまり大きな声出すなよ。猫が逃げるだろ」
「おい、あれ!」
言ってるそばから大声を上げるなんて、本当に二郎のやつは馬鹿だ。
しかし二郎が指差した方を見ると、そこには猫のようなシルエットが。柄もオレンジベースに縞模様が鮮やかな、まさしく探していた茶トラ猫。
「とりあえず僕が近付いて捕まえる。もし逃げ出したら、二郎はダッシュで追いかけろ!」
「任せろ!」
こちらに気付いていないのか、動く様子の無い猫にそっと歩み寄る。
足音や気配を消して、物陰に隠れながらようやく辿り着いた僕に待ち受けていたのはなんと…。
「ぬいぐるみじゃねぇか〜!!!!!!」
手触りの良いふわふわのぬいぐるみを手に、僕は思わず叫んだ。
「二郎の目は節穴なのか!?」
「遠くから見たら猫に見えたんだよ!つーかぬいぐるみとはいえ猫だろ!半分正解だろ!三郎だって、近付いてったくせに気付かなかったじゃねぇか!」
「うるさいうるさい!隠れながら行ったら普通気付かないだろ!」
「まぁまぁ二人共、落ち着くパル」
『お前は黙ってろ!!』
僕達の間に入って宥める声への反抗が見事にハモる。
そして声の主を確認して、驚きの叫びが再びハモった。
『ぬいぐるみが喋った〜〜!!!!?』
先程見付けたぬいぐるみが口を開き、生きているかのように動き出したのだ。
「ボクはパルトナ!猫探しの依頼をお願いしたのは、他でもないこのボクパル!」
僕の頭脳を持ってしても、全く理解が追い付かない。
ぬいぐるみが喋り出したと思ったらこいつが今回の依頼主で、しかも自分を探せって依頼を寄越していたのか?
「何喋ってんのか全っ然分かんねぇ…」
二郎が頭を抱え始める。いつもならそんな二郎を小馬鹿にする所だが、今は僕も同じだ。
パルトナとやらに説明を促すと、えっへんと胸を張りながら話し始めた。
「君達の噂はかねがね聞いていたパル。勝手ながら、素質があるかチェックさせてもらったパル!」
『はあ…?』
「敵がボク達の国を支配し、ここイケブクロにも魔の手が忍び寄っているパル。敵に対抗するには高いラップスキルが必要になるパル。そこで!ラップスキルが高い者しかボクを見付けられないようにバリアを張って、君達がボクを見付けられるのか試したって訳パル!」
『はあ…』
なんともファンタジーが過ぎる事態は上手く飲み込めない。
「とりあえず連れて帰って、兄ちゃんに相談した方が良くねぇか…?」
「そうだな…」
そんなこんなで猫のぬいぐるみ・パルトナを連れて自宅に戻る。
「おかえり、二郎に三郎。猫は見付かったか?」
「一兄、その件なんですが…」
「これを見てくれよ、兄ちゃん」
むいっとパルトナを持ち上げる二郎。
そんな二郎とパルトナを交互に見やり、不思議そうな顔をする一兄。
「……ぬいぐるみがどうした?」
「ぬいぐるみじゃないパル!」
「うおっ、喋った!?」
僕達と同じリアクションをする一兄に、パルトナは得意気に喋り出した。
「やっぱり君もボクの事が見えるパルね!君達にはプリキュアになって、イケブクロの為に戦って欲しいパル!」
「俺達がプリキュア!?」
「なんだって…!?」
「プリキュアだって!兄ちゃんやろうよ!」
驚く僕と一兄とは違い、何故か浮かれている二郎。そんな二郎に向かって、一兄は厳しく言い放った。
「馬鹿野郎!プリキュアはな、生半可な気持ちでやるもんじゃねぇんだよ!」
一兄の言う通りだ。パルトナには悪いが、他を当たってもらう事にしよう。
「俺達のブクロを守る責任と覚悟が、お前にはあるのか?」
腕を組み、二郎を見据える一兄。そんな一兄に恐縮しながら、二郎は呟いた。
「ごめん兄ちゃん…。でも俺は軽い気持ちで言ったんじゃないよ!覚悟だってある!俺達だったら絶対にブクロを守れると思って!」
真剣な目をする二郎に感動した様子の一兄は、静かに頷くとがばっと椅子から立ち上がった。
「そう来なくちゃな!それでこそ俺の弟だ!」
そして握り拳を作り、右手を天高く掲げて宣言した。
「この依頼は萬屋ヤマダが確かに引き受けた!Buster Bros!!!プリキュア、ここに誕生だ!」
僕だけが置いて行かれている状況に、開いた口が塞がらない。
まさか一兄も乗り気だったとは…!
「三郎も勿論やるよな?」
「〜〜〜〜、やります!」
一兄に言われると、そう返事せざるを得ないじゃないか!
「このヒプノシストーンをマイクにセットすると、プリキュアに変身出来るパル!」
パルトナは僕達に楕円形の綺麗な宝石とマイクを渡して来た。
一兄のヒプノシストーンは赤色、二郎は青色、僕は黄色だ。マイクも同じ色をしている。
「敵はいつ侵略して来るか分からないパル。気を引き締めて行くパル!」
『OK!』
兄弟三人と妖精一匹、拳を合わせて結束する。
その時、外から聞いた事の無い轟音が響いた。
「この気配は!ヘイターが現れたパル!」
急いで外に出ると、真っ黒い巨大な化物がのしのしと歩いているのが見えた。
「でっけぇ…!」
「ぼさっとするなよ二郎」
悠長に見上げる二郎をたしなめ、僕達は早速マイクを掲げる。
『ヒプノシスチェンジ!』
持ち手を飾るリボンの真ん中にはくぼみがあり、そこにヒプノシストーンをセットすると辺りがキラキラと輝き出した。
その輝きに包まれると、どんどん衣装が変わって行く。
兄弟で色違いらしい膝上丈のドレスは、フリルやらリボンやらでふわふわだ。
一兄は赤いオープントゥパンプス。二郎はハイソックスに青いショートブーツ。僕はニーハイに黄色いパンプスを履いている。
髪型も変化していて、一兄は黒髪に赤いメッシュが目を引くポニーテール。二郎は黒髪を青いメッシュが彩るセミロングヘア。僕は黄色いメッシュの入ったツインテールだ。
不本意な格好を強いられた次は、勝手に口が喋り出した。
「with homie 勝つぜ!ブクロの一番手、キュアアインス!」
「どうなっても知らんぜ!ブクロの二番手、キュアツヴァイ!」
「決着付けるよ3ターンで!ブクロの三番手、キュアドライ!」
「ぶちかまして行くぜ兄弟!調子はどうだい!?」
『All right!問題ない!』
『Buster Bros!!!プリキュア!』
名乗りを終えた瞬間、敵はこちらに向かってミサイルを飛ばして来た。
「そのマイクを使ってラップをすると、ヘイターに攻撃出来るパル!」
敵の攻撃をかわし、僕達はパルトナの助言に従いマイクを握る。
「─天下を取るぜイケブクロ!伝播するBuster Bros!!!のフロウ、愚弄するとは良い度胸だ!喧嘩なら負けねぇ一郎の無双だ!─」
「─今お前らに宣戦布告!集う雑魚共にヴァースを放つ!過去より今だ、上昇志向!登場kick off、二郎の番だ!─」
「─三郎のお出まし、ほら楽勝。刮目せよ、僕の実力に脱帽。末っ子のお願い聞いてくれる?ゲームセット、僕らの絆見せ付ける!─」
「良い感じパル!」
僕達のラップを受けたヘイターは、動きを止め悶えている。
しかしすぐに立て直し、攻撃を再開して来た。
「─愛する兄弟とバイブス高め挑む、俺がキュアアインス!地元けがす奴は許さねぇ!萬屋の仕事開始だ、カスはBlah!─」
「─この勝負余裕のゴール!Kill them all レクイエムを送る!つーかうざい、スカシなら用無い!キュアツヴァイ、ほら行くぜ All right─」
「─キュアドライ、諦めず何度もトライ!はいはいもう終わり、弱い弱い粗大ゴミ、バイバイ─」
ヘイターは呻き声を上げ地面に倒れ伏した。
「もう一息パル!」
パルトナのその言葉に、僕達はマイクを握る手に力を入れた。
「─まだまだ挑む覚悟あるか?二郎、三郎?─」
「─勿論だよ兄ちゃん!見ろblast!この爆破で看取る悪モン─」
「─当然です一兄!行こうラスト、勝利の為に試行錯誤!─」
ヘイターは大きな声で叫びながら、キラキラと輝いて消えていった。
そして気が付くと可愛らしい衣装は元に戻っている。
「噂に違わぬ活躍振りだったパル!この調子でイケブクロの平和を守って欲しいパル!」
「任せとけ!」
「一兄、頑張りましょうね!」
「俺達が居れば問題無いよね、兄ちゃん!」
悪を倒して爽やかに晴れた青空に向かって、僕達はハンドサインを掲げた。
随分とおかしな夢を見たようだ。
どこか疲れた感じがするが、すっかり目が覚めてしまったのでベッドから抜け出す事にする。
「二郎のくせに早起きなんて珍しいな。今日は日曜日だろ」
リビングへ向かうと、僕より早く二郎がテレビの前を陣取っていた。
「へへっ!今日から新しいプリキュアが放送されるから、兄ちゃんと一緒にリアタイすんだ!」
プリキュア…今日見た夢にも、そのようなワードがあったかも知れない。
「プリキュアって女の子が観るもんだろ。面白いのか?」
「今の時代にそんな発言、三郎は遅れてるな〜!」
馬鹿にして来る発言にかちんと来ていると、後ろから一兄の声がした。
「性別や年齢問わず楽しめるのがプリキュアの良い所だ。それに新シリーズでは少年もレギュラーとして変身するようだから、展開が楽しみだな」
長く続くシリーズだからこそ、柔軟な発想に冒険心も必要となる事だろうか。
「せっかくだし、僕も一話観てみようかな…」
テレビの前でわくわくしている兄達に混ざり、僕も放送を正座で待機するのだった。
「作画にストーリーにキャラに曲…一話から神作品の予感しかなかったな…」
「来週も楽しみだね!」
「なるほど、これがプリキュア…。他のシリーズも観て勉強するとしようか…」
「良い心掛けだ、三郎!俺のおすすめは──」
「ありがとうございます!早速観て、プリキュアとしての自覚を養います!」
『プリキュアとしての自覚…?』
─ END ─
【あとがき】
日曜日の朝に観たいですね。爽やかディビジョン。
2024/06/23
今日の依頼は猫探しだ。
不本意ながら二郎と共に行動しているが、一兄に任された仕事なので完璧に遂行しようと思う。
「茶トラで鈴を着けた猫…なんて正直多過ぎて分かんねぇよな〜。写真でもあればワンチャンあったのに」
僕の隣を歩く二郎が愚痴り始める。
昨夜届いたメールには茶トラ猫の捜索依頼のみが書かれていて、写真などは添付されていなかったのだ。
「それでも見付け出すしかないだろ。一兄が僕達を信じて託してくれた仕事だぞ。ま、無理って言うなら二郎は帰れば良いさ。この依頼は僕ひとりでも余裕だしね」
「あぁ!?無理とは言ってねぇだろ!三郎こそ帰ってPCとにらめっこでもしてろ!」
「あーはいはい。あんまり大きな声出すなよ。猫が逃げるだろ」
「おい、あれ!」
言ってるそばから大声を上げるなんて、本当に二郎のやつは馬鹿だ。
しかし二郎が指差した方を見ると、そこには猫のようなシルエットが。柄もオレンジベースに縞模様が鮮やかな、まさしく探していた茶トラ猫。
「とりあえず僕が近付いて捕まえる。もし逃げ出したら、二郎はダッシュで追いかけろ!」
「任せろ!」
こちらに気付いていないのか、動く様子の無い猫にそっと歩み寄る。
足音や気配を消して、物陰に隠れながらようやく辿り着いた僕に待ち受けていたのはなんと…。
「ぬいぐるみじゃねぇか〜!!!!!!」
手触りの良いふわふわのぬいぐるみを手に、僕は思わず叫んだ。
「二郎の目は節穴なのか!?」
「遠くから見たら猫に見えたんだよ!つーかぬいぐるみとはいえ猫だろ!半分正解だろ!三郎だって、近付いてったくせに気付かなかったじゃねぇか!」
「うるさいうるさい!隠れながら行ったら普通気付かないだろ!」
「まぁまぁ二人共、落ち着くパル」
『お前は黙ってろ!!』
僕達の間に入って宥める声への反抗が見事にハモる。
そして声の主を確認して、驚きの叫びが再びハモった。
『ぬいぐるみが喋った〜〜!!!!?』
先程見付けたぬいぐるみが口を開き、生きているかのように動き出したのだ。
「ボクはパルトナ!猫探しの依頼をお願いしたのは、他でもないこのボクパル!」
僕の頭脳を持ってしても、全く理解が追い付かない。
ぬいぐるみが喋り出したと思ったらこいつが今回の依頼主で、しかも自分を探せって依頼を寄越していたのか?
「何喋ってんのか全っ然分かんねぇ…」
二郎が頭を抱え始める。いつもならそんな二郎を小馬鹿にする所だが、今は僕も同じだ。
パルトナとやらに説明を促すと、えっへんと胸を張りながら話し始めた。
「君達の噂はかねがね聞いていたパル。勝手ながら、素質があるかチェックさせてもらったパル!」
『はあ…?』
「敵がボク達の国を支配し、ここイケブクロにも魔の手が忍び寄っているパル。敵に対抗するには高いラップスキルが必要になるパル。そこで!ラップスキルが高い者しかボクを見付けられないようにバリアを張って、君達がボクを見付けられるのか試したって訳パル!」
『はあ…』
なんともファンタジーが過ぎる事態は上手く飲み込めない。
「とりあえず連れて帰って、兄ちゃんに相談した方が良くねぇか…?」
「そうだな…」
そんなこんなで猫のぬいぐるみ・パルトナを連れて自宅に戻る。
「おかえり、二郎に三郎。猫は見付かったか?」
「一兄、その件なんですが…」
「これを見てくれよ、兄ちゃん」
むいっとパルトナを持ち上げる二郎。
そんな二郎とパルトナを交互に見やり、不思議そうな顔をする一兄。
「……ぬいぐるみがどうした?」
「ぬいぐるみじゃないパル!」
「うおっ、喋った!?」
僕達と同じリアクションをする一兄に、パルトナは得意気に喋り出した。
「やっぱり君もボクの事が見えるパルね!君達にはプリキュアになって、イケブクロの為に戦って欲しいパル!」
「俺達がプリキュア!?」
「なんだって…!?」
「プリキュアだって!兄ちゃんやろうよ!」
驚く僕と一兄とは違い、何故か浮かれている二郎。そんな二郎に向かって、一兄は厳しく言い放った。
「馬鹿野郎!プリキュアはな、生半可な気持ちでやるもんじゃねぇんだよ!」
一兄の言う通りだ。パルトナには悪いが、他を当たってもらう事にしよう。
「俺達のブクロを守る責任と覚悟が、お前にはあるのか?」
腕を組み、二郎を見据える一兄。そんな一兄に恐縮しながら、二郎は呟いた。
「ごめん兄ちゃん…。でも俺は軽い気持ちで言ったんじゃないよ!覚悟だってある!俺達だったら絶対にブクロを守れると思って!」
真剣な目をする二郎に感動した様子の一兄は、静かに頷くとがばっと椅子から立ち上がった。
「そう来なくちゃな!それでこそ俺の弟だ!」
そして握り拳を作り、右手を天高く掲げて宣言した。
「この依頼は萬屋ヤマダが確かに引き受けた!Buster Bros!!!プリキュア、ここに誕生だ!」
僕だけが置いて行かれている状況に、開いた口が塞がらない。
まさか一兄も乗り気だったとは…!
「三郎も勿論やるよな?」
「〜〜〜〜、やります!」
一兄に言われると、そう返事せざるを得ないじゃないか!
「このヒプノシストーンをマイクにセットすると、プリキュアに変身出来るパル!」
パルトナは僕達に楕円形の綺麗な宝石とマイクを渡して来た。
一兄のヒプノシストーンは赤色、二郎は青色、僕は黄色だ。マイクも同じ色をしている。
「敵はいつ侵略して来るか分からないパル。気を引き締めて行くパル!」
『OK!』
兄弟三人と妖精一匹、拳を合わせて結束する。
その時、外から聞いた事の無い轟音が響いた。
「この気配は!ヘイターが現れたパル!」
急いで外に出ると、真っ黒い巨大な化物がのしのしと歩いているのが見えた。
「でっけぇ…!」
「ぼさっとするなよ二郎」
悠長に見上げる二郎をたしなめ、僕達は早速マイクを掲げる。
『ヒプノシスチェンジ!』
持ち手を飾るリボンの真ん中にはくぼみがあり、そこにヒプノシストーンをセットすると辺りがキラキラと輝き出した。
その輝きに包まれると、どんどん衣装が変わって行く。
兄弟で色違いらしい膝上丈のドレスは、フリルやらリボンやらでふわふわだ。
一兄は赤いオープントゥパンプス。二郎はハイソックスに青いショートブーツ。僕はニーハイに黄色いパンプスを履いている。
髪型も変化していて、一兄は黒髪に赤いメッシュが目を引くポニーテール。二郎は黒髪を青いメッシュが彩るセミロングヘア。僕は黄色いメッシュの入ったツインテールだ。
不本意な格好を強いられた次は、勝手に口が喋り出した。
「with homie 勝つぜ!ブクロの一番手、キュアアインス!」
「どうなっても知らんぜ!ブクロの二番手、キュアツヴァイ!」
「決着付けるよ3ターンで!ブクロの三番手、キュアドライ!」
「ぶちかまして行くぜ兄弟!調子はどうだい!?」
『All right!問題ない!』
『Buster Bros!!!プリキュア!』
名乗りを終えた瞬間、敵はこちらに向かってミサイルを飛ばして来た。
「そのマイクを使ってラップをすると、ヘイターに攻撃出来るパル!」
敵の攻撃をかわし、僕達はパルトナの助言に従いマイクを握る。
「─天下を取るぜイケブクロ!伝播するBuster Bros!!!のフロウ、愚弄するとは良い度胸だ!喧嘩なら負けねぇ一郎の無双だ!─」
「─今お前らに宣戦布告!集う雑魚共にヴァースを放つ!過去より今だ、上昇志向!登場kick off、二郎の番だ!─」
「─三郎のお出まし、ほら楽勝。刮目せよ、僕の実力に脱帽。末っ子のお願い聞いてくれる?ゲームセット、僕らの絆見せ付ける!─」
「良い感じパル!」
僕達のラップを受けたヘイターは、動きを止め悶えている。
しかしすぐに立て直し、攻撃を再開して来た。
「─愛する兄弟とバイブス高め挑む、俺がキュアアインス!地元けがす奴は許さねぇ!萬屋の仕事開始だ、カスはBlah!─」
「─この勝負余裕のゴール!Kill them all レクイエムを送る!つーかうざい、スカシなら用無い!キュアツヴァイ、ほら行くぜ All right─」
「─キュアドライ、諦めず何度もトライ!はいはいもう終わり、弱い弱い粗大ゴミ、バイバイ─」
ヘイターは呻き声を上げ地面に倒れ伏した。
「もう一息パル!」
パルトナのその言葉に、僕達はマイクを握る手に力を入れた。
「─まだまだ挑む覚悟あるか?二郎、三郎?─」
「─勿論だよ兄ちゃん!見ろblast!この爆破で看取る悪モン─」
「─当然です一兄!行こうラスト、勝利の為に試行錯誤!─」
ヘイターは大きな声で叫びながら、キラキラと輝いて消えていった。
そして気が付くと可愛らしい衣装は元に戻っている。
「噂に違わぬ活躍振りだったパル!この調子でイケブクロの平和を守って欲しいパル!」
「任せとけ!」
「一兄、頑張りましょうね!」
「俺達が居れば問題無いよね、兄ちゃん!」
悪を倒して爽やかに晴れた青空に向かって、僕達はハンドサインを掲げた。
随分とおかしな夢を見たようだ。
どこか疲れた感じがするが、すっかり目が覚めてしまったのでベッドから抜け出す事にする。
「二郎のくせに早起きなんて珍しいな。今日は日曜日だろ」
リビングへ向かうと、僕より早く二郎がテレビの前を陣取っていた。
「へへっ!今日から新しいプリキュアが放送されるから、兄ちゃんと一緒にリアタイすんだ!」
プリキュア…今日見た夢にも、そのようなワードがあったかも知れない。
「プリキュアって女の子が観るもんだろ。面白いのか?」
「今の時代にそんな発言、三郎は遅れてるな〜!」
馬鹿にして来る発言にかちんと来ていると、後ろから一兄の声がした。
「性別や年齢問わず楽しめるのがプリキュアの良い所だ。それに新シリーズでは少年もレギュラーとして変身するようだから、展開が楽しみだな」
長く続くシリーズだからこそ、柔軟な発想に冒険心も必要となる事だろうか。
「せっかくだし、僕も一話観てみようかな…」
テレビの前でわくわくしている兄達に混ざり、僕も放送を正座で待機するのだった。
「作画にストーリーにキャラに曲…一話から神作品の予感しかなかったな…」
「来週も楽しみだね!」
「なるほど、これがプリキュア…。他のシリーズも観て勉強するとしようか…」
「良い心掛けだ、三郎!俺のおすすめは──」
「ありがとうございます!早速観て、プリキュアとしての自覚を養います!」
『プリキュアとしての自覚…?』
─ END ─
【あとがき】
日曜日の朝に観たいですね。爽やかディビジョン。
2024/06/23
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