Dream
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俺には付き合って数ヶ月経つ恋人が居る。
先日、恋人であるるあきに自宅の合鍵を渡したのだが、るあきは「この前簓くんから貰ったよ?」とキーケースから無許可で複製された合鍵を取り出して見せて来た。迷わずそれを没収し、正式に俺から手渡したのを覚えている。
そんな出来事があり、最近は部屋の電気が点いているのを見ると、るあきかと思って内心わくわくしながら自宅に入るのだが、残念ながら今の所全て簓だ。
今日も部屋の電気が点いている。溜息をつきながら玄関の扉を開くと、案の定簓が出迎えて来た。
「盧笙、今日もお疲れさん!」
「またお前は勝手に人ん家上がり込んで…。ほら、はよ合鍵出せ」
簓に向かって右手を出すも、奴は駄々っ子のように頬を膨らませる。全然可愛くない。
「そんな事言うて、るあきちゃんには合鍵渡してんのやろ!」
「るあきは俺の恋人なんやし、当たり前やろ」
「俺かて盧笙の相方やん!しかも俺の方が付き合い長い!」
「めんどくさ…。あと勝手に俺の合鍵渡して周るんやめてくれへん?るあきだからまだ良かったけども、まさか他の奴にもバラまいてへんやろな…?」
そう問うと、簓はへらへらと笑いながら答える。
「零には渡した」
「なんでやねん」
「同じチームの仲間やん。まぁ、零は既に合鍵持っとったんやけど」
「なんでやねん」
え?ほんまになんでやねん…?
玄関先でそんなやりとりをしていると、奥からひょっこりと誰かが顔を覗かせた。
「盧笙くん、お帰りなさい。二人で漫才でもしてたの?」
「るあき、来とったんか。ただいま」
彼女の頭を撫でてリビングへ向かう。るあきに会えた喜びで抜けていたが、ふと冷静になり簓へ向き直る。
「ずっと二人きりやったん?お前、るあきに変な事言うとらんよな?」
「変な事?」
小首を傾げて唇を尖らせる簓。全然可愛くない。
「返答に困る元相方マウントとか、俺が酔っ払った時喋った話とか……」
そう小声で返した時、背後からるあきの声がした。
「盧笙くん、酔ったら惚気話しかしなくなるって本当?もしかして、私と居る時にお酒飲まないのってそれが理由?」
「あー、まぁ……」
るあきから視線を外して曖昧に答える。その視線の先で、簓が楽しそうに笑っていた。
「今度動画でも撮ってるあきちゃんに送っとくわ!」
「お願いします!」
最悪な約束を交わしている二人を見て、俺は必死で話題を変える。
「ほら、二人共腹減ったやろ!適当に出前でもして晩飯にしようや」
「わぁ、盧笙くんの奢り?」
「どうせやし零も誘おか!」
晩飯時という事もあり、二人の意識を逸らす事に成功した。俺の奢りでもなんでもええから、さっきの話はどうかこのまま忘れてくれ。折角の週末やけど、今日はアルコールはおあずけやなぁ……。
俺とるあきで色々と注文している間、簓は零に電話を掛けていた。
しばらくすると、テーブルの上は様々な料理でいっぱいになる。ちょっとしたパーティーだ。
空腹の俺達は零を待たず、好き勝手に食事を開始する。
テレビにツッコミを入れたり適当な話題で盛り上がっていると、玄関の扉が開く音が聞こえた。ちなみに呼び鈴は鳴っていないがいつもの事である。
「いよう、邪魔するぜ」
「邪魔すんなら帰ってや」
関西お決まりの言葉で出迎えるも零はスルー。これもいつもの事だ。
「面白そうだからこんな手土産も持って来たぜ、ほら」
零は片手に提げていた紙袋から箱を取り出した。それを見た俺と簓は思わず叫ぶ。
「この短時間でよう手に入ったなそれ…」
「おいちゃん、顔広いからな。この程度のツテはいくらでもあんだよ」
零が手土産に携えて来た物、それは知る人ぞ知る高級酒だった。生産数の少なさから幻の酒とも言われるそれを、何故かこのおっさんはなんでもないような顔で開封しだす。
「私も頂いちゃって良いんですか?」
「おう、飲めるなら飲んどけ飲んどけ。普通に生きてたら、お目に掛かれるかどうかも分からねぇ代物だからな」
嬉しそうに目を輝かせるるあきは俺にグラスを持たせ、勢い良くそれを注いだ。
「乾杯!こんな貴重なお酒を盧笙くんと飲めるなんて感激だよ」
「せやなぁ。香りも良いし、すっきりしてて飲みやすさもあるな、これ」
そんな感想を呟きつつ、俺はるあきが波々注いだ酒をすぐに飲み干してしまった。
あれ?今日アルコールは飲まないようにせんと、なんて言ったんは何処の誰やったっけ?
さっきの話をあのまま忘れ去っていたのは俺だけだったようで、簓は酒を呷りつつ片手でスマホを構え、るあきは酒瓶を抱えて俺の隣にぴったりとくっ付いている。零はそんな俺達を面白そうに眺めながら酒を飲み進めていた。
「美味しい?ほら、おかわりどうぞ」
満面の笑みで、再びこぼれそうな程の量をグラスにたっぷり注いで来るるあき。
「笑った顔めちゃくちゃかわええなぁ」
心の中で呟いたはずの言葉が声に出ている事にも気付かず、残念ながらこの日の俺の記憶は、此処でぷっつりと途切れたのだった。
─ END ─
【あとがき】
2025/01/24
先日、恋人であるるあきに自宅の合鍵を渡したのだが、るあきは「この前簓くんから貰ったよ?」とキーケースから無許可で複製された合鍵を取り出して見せて来た。迷わずそれを没収し、正式に俺から手渡したのを覚えている。
そんな出来事があり、最近は部屋の電気が点いているのを見ると、るあきかと思って内心わくわくしながら自宅に入るのだが、残念ながら今の所全て簓だ。
今日も部屋の電気が点いている。溜息をつきながら玄関の扉を開くと、案の定簓が出迎えて来た。
「盧笙、今日もお疲れさん!」
「またお前は勝手に人ん家上がり込んで…。ほら、はよ合鍵出せ」
簓に向かって右手を出すも、奴は駄々っ子のように頬を膨らませる。全然可愛くない。
「そんな事言うて、るあきちゃんには合鍵渡してんのやろ!」
「るあきは俺の恋人なんやし、当たり前やろ」
「俺かて盧笙の相方やん!しかも俺の方が付き合い長い!」
「めんどくさ…。あと勝手に俺の合鍵渡して周るんやめてくれへん?るあきだからまだ良かったけども、まさか他の奴にもバラまいてへんやろな…?」
そう問うと、簓はへらへらと笑いながら答える。
「零には渡した」
「なんでやねん」
「同じチームの仲間やん。まぁ、零は既に合鍵持っとったんやけど」
「なんでやねん」
え?ほんまになんでやねん…?
玄関先でそんなやりとりをしていると、奥からひょっこりと誰かが顔を覗かせた。
「盧笙くん、お帰りなさい。二人で漫才でもしてたの?」
「るあき、来とったんか。ただいま」
彼女の頭を撫でてリビングへ向かう。るあきに会えた喜びで抜けていたが、ふと冷静になり簓へ向き直る。
「ずっと二人きりやったん?お前、るあきに変な事言うとらんよな?」
「変な事?」
小首を傾げて唇を尖らせる簓。全然可愛くない。
「返答に困る元相方マウントとか、俺が酔っ払った時喋った話とか……」
そう小声で返した時、背後からるあきの声がした。
「盧笙くん、酔ったら惚気話しかしなくなるって本当?もしかして、私と居る時にお酒飲まないのってそれが理由?」
「あー、まぁ……」
るあきから視線を外して曖昧に答える。その視線の先で、簓が楽しそうに笑っていた。
「今度動画でも撮ってるあきちゃんに送っとくわ!」
「お願いします!」
最悪な約束を交わしている二人を見て、俺は必死で話題を変える。
「ほら、二人共腹減ったやろ!適当に出前でもして晩飯にしようや」
「わぁ、盧笙くんの奢り?」
「どうせやし零も誘おか!」
晩飯時という事もあり、二人の意識を逸らす事に成功した。俺の奢りでもなんでもええから、さっきの話はどうかこのまま忘れてくれ。折角の週末やけど、今日はアルコールはおあずけやなぁ……。
俺とるあきで色々と注文している間、簓は零に電話を掛けていた。
しばらくすると、テーブルの上は様々な料理でいっぱいになる。ちょっとしたパーティーだ。
空腹の俺達は零を待たず、好き勝手に食事を開始する。
テレビにツッコミを入れたり適当な話題で盛り上がっていると、玄関の扉が開く音が聞こえた。ちなみに呼び鈴は鳴っていないがいつもの事である。
「いよう、邪魔するぜ」
「邪魔すんなら帰ってや」
関西お決まりの言葉で出迎えるも零はスルー。これもいつもの事だ。
「面白そうだからこんな手土産も持って来たぜ、ほら」
零は片手に提げていた紙袋から箱を取り出した。それを見た俺と簓は思わず叫ぶ。
「この短時間でよう手に入ったなそれ…」
「おいちゃん、顔広いからな。この程度のツテはいくらでもあんだよ」
零が手土産に携えて来た物、それは知る人ぞ知る高級酒だった。生産数の少なさから幻の酒とも言われるそれを、何故かこのおっさんはなんでもないような顔で開封しだす。
「私も頂いちゃって良いんですか?」
「おう、飲めるなら飲んどけ飲んどけ。普通に生きてたら、お目に掛かれるかどうかも分からねぇ代物だからな」
嬉しそうに目を輝かせるるあきは俺にグラスを持たせ、勢い良くそれを注いだ。
「乾杯!こんな貴重なお酒を盧笙くんと飲めるなんて感激だよ」
「せやなぁ。香りも良いし、すっきりしてて飲みやすさもあるな、これ」
そんな感想を呟きつつ、俺はるあきが波々注いだ酒をすぐに飲み干してしまった。
あれ?今日アルコールは飲まないようにせんと、なんて言ったんは何処の誰やったっけ?
さっきの話をあのまま忘れ去っていたのは俺だけだったようで、簓は酒を呷りつつ片手でスマホを構え、るあきは酒瓶を抱えて俺の隣にぴったりとくっ付いている。零はそんな俺達を面白そうに眺めながら酒を飲み進めていた。
「美味しい?ほら、おかわりどうぞ」
満面の笑みで、再びこぼれそうな程の量をグラスにたっぷり注いで来るるあき。
「笑った顔めちゃくちゃかわええなぁ」
心の中で呟いたはずの言葉が声に出ている事にも気付かず、残念ながらこの日の俺の記憶は、此処でぷっつりと途切れたのだった。
─ END ─
【あとがき】
2025/01/24
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