Dream
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朝10時。俺は待ち合わせ場所の駅前で、そわそわとある人物を待っていた。ふと顔を上げると、何処か見覚えのある色合いの服装をした女性が小走りでやって来るのが視界に入る。
俺は彼女に向かって大きく手を振った。
「おはようございます、るあきさん!」
「一郎くん、おはよう。私から誘ったのに遅くなっちゃってごめんね」
「全然大丈夫っすよ。早速向かいましょうか」
待ち合わせ時間ぴったりなのに申し訳無さそうに眉を下げる彼女が愛おしく思え、俺は笑顔を返す。今日は待ちに待った、るあきさんとのオタ活エンジョイデーなのだ。
「今日は一郎くんと一緒にコラボカフェ行けるの、すごく楽しみにしてたんだ」
彼女とはご近所さんで、会うとアニメの話題で盛り上がるオタク仲間でもある。
「俺も、誘ってくれてまじ嬉しかったっす!るあきさんにおすすめされたこの作品、面白くて一気見したんすよ!」
「一郎くんに布教したこのタイミングで、まさかコラボカフェやるなんてびっくりしたよ」
そんな会話をしながら目的地に到着した。開店までしばらく時間はあるが、既に目の前には長蛇の列が出来上がっている。
「時間掛かりそうだね…。一郎くんは午後から仕事入ってたりするの?」
「弟達が休みで、依頼は二人に任せて来てるんで大丈夫っす。今日はるあきさんと一日一緒に居たかったんで」
そう彼女に笑顔を返すと、目を泳がせて戸惑った表情をされた。
「…あんまり勘違いさせるような事は言わない方が良いよ?」
「え?」
「ううん、なんでもない」
頬を赤くして呟く彼女の言葉に、こちらの方が勘違いしそうになってしまう。俺は頭を振って雑念を払い、るあきさんと共に長い列へ混ざる。作品について語り合っていると、いつの間にか入場の順番が来た。
メニュー表を眺め、ドリンクやフード、デザートをいくつか注文して行く。そして頼んだ品が来るまでの間に、るあきさんと店内にあるキャラクターの等身大パネルを写真に納めて行った。
目を輝かせてスマホを構える彼女に、俺はそっと声を掛ける。
「るあきさんの最推しっすよね。俺ツーショット撮りますよ」
「え!良いの!?」
るあきさんの嬉しそうな声が店内に響き渡る。彼女は周りに小さく頭を下げながら、最推しの隣に移動した。
なるほど。見覚えのあるコーディネートは、最推しのビジュアルを模したものだったらしい。
「待って、ちょっと待って…前髪とか直したい…」
スマホの画面を鏡代わりにして前髪を整えるるあきさんを、俺は自分のスマホを構えて眺める。
「OK、ごめん、お願いします」
「はい、さっきより更に可愛くなったっす。じゃあ撮りまーす」
「ちょっと待って、ねぇ、ちょっと待って?」
「ん、もっかいチェックします?最推しとのツーショはベストな自分で撮りたいっすよね」
るあきさんは慌てながらストップを掛けた。念の入りようが素晴らしい。
「そう、だね。それもあるけどちょっと……うん、一回私も落ち着くね」
るあきさんはゆっくりと深呼吸をした。最推しが隣に居て緊張する気持ちはめちゃくちゃ分かる。
そんなこんなで無事に撮影を終え席に戻ると、丁度頼んだメニューが届いた。
「わぁ、どれも美味しそう!」
「一話で食べてたこれとか、再現度高いっすね!」
作品やキャラクターをモチーフにしたメニューは、なんともオタク心を擽る。
るあきさんは鞄からアクリルスタンドを取り出し、テーブルに並べて再び撮影を始めた。そんな彼女の手元に視線が留まる。
「あ、ごめんね。早く食べたいよね」
「いや…その爪ってもしかして、最推し概念ネイルってやつすか?」
細やかな装飾がされたるあきさんの指先を差すと、彼女は嬉しそうに手を揃えて俺に向けた。
「そうそう、よく気付いたね!」
「細かい要素も拾ってて、見てて面白いっすね。今日の服とも合っててめちゃくちゃ可愛いっす!」
「ほんと待って……」
概念コーデに概念ネイル。最推しへの愛が伝わり微笑ましい。
目元の色味を見るにメイクも恐らく最推し概念だと思うが、彼氏でもないのにそこまで気付く男は流石に気持ち悪いだろうか……。
「ありがとう、一郎くん。そう言ってもらえると、頑張った甲斐があるかも」
メイクについても言及するか迷っていると、るあきさんが笑顔で言った。そして彼女は撮影を終えたスマホを仕舞い、メニューを頼むと貰えるランダム封入のカードを開けた。
「あ、この子かぁ」
リアクションから察するに、るあきさんは推しでは無いキャラクターが当たったらしい。
自分の推しを当てたい気持ちは勿論あるが、此処は俺が彼女の最推しを引き当て、格好良くプレゼントするのが最高にクールなのでは?
俺は呼吸を整えカードを開封した。
「よし!るあきさんの最推し!」
見事に引き当て、そのままるあきさんにカードを手渡す。
「良いの?貰っちゃって」
「推してる人の元に居た方がキャラも嬉しいっすよ」
そんな格好付けた事を言い、俺はるあきさんの嬉しそうな笑顔を眺める。
「一郎くん、神?」
拝んでおこう、とるあきさんは俺に向かって両手を合わせる。予想外の行動に、思わず笑ってしまった。
そして頼んだメニューを完食し、俺達はコラボカフェを後にする。
「何処か行きたい所ってあったりします?良かったらおすすめの、るあきさんと行きたいなって思ってた所があるんすけど」
俺を見上げるるあきさんにそう言うと、彼女は楽しそうに頷いた。
「じゃあ、折角だしそこに行こう。楽しみ」
わくわくとした表情を浮かべたその瞬間、彼女はすぐにまた目を泳がせ顔を赤くする。
「…どうかしました?るあきさん、顔赤いっすけど」
俺の事を意識してくれての反応ならめちゃくちゃ嬉しい。俺はわざと、彼女にそんな指摘をしてみたのだった。
─ END ─
【あとがき】
夢主視点のこちらもどうぞ。
▶推しにときめいていたはずがいつの間にか一郎の事で頭がいっぱいになっていた話
2025/01/17
俺は彼女に向かって大きく手を振った。
「おはようございます、るあきさん!」
「一郎くん、おはよう。私から誘ったのに遅くなっちゃってごめんね」
「全然大丈夫っすよ。早速向かいましょうか」
待ち合わせ時間ぴったりなのに申し訳無さそうに眉を下げる彼女が愛おしく思え、俺は笑顔を返す。今日は待ちに待った、るあきさんとのオタ活エンジョイデーなのだ。
「今日は一郎くんと一緒にコラボカフェ行けるの、すごく楽しみにしてたんだ」
彼女とはご近所さんで、会うとアニメの話題で盛り上がるオタク仲間でもある。
「俺も、誘ってくれてまじ嬉しかったっす!るあきさんにおすすめされたこの作品、面白くて一気見したんすよ!」
「一郎くんに布教したこのタイミングで、まさかコラボカフェやるなんてびっくりしたよ」
そんな会話をしながら目的地に到着した。開店までしばらく時間はあるが、既に目の前には長蛇の列が出来上がっている。
「時間掛かりそうだね…。一郎くんは午後から仕事入ってたりするの?」
「弟達が休みで、依頼は二人に任せて来てるんで大丈夫っす。今日はるあきさんと一日一緒に居たかったんで」
そう彼女に笑顔を返すと、目を泳がせて戸惑った表情をされた。
「…あんまり勘違いさせるような事は言わない方が良いよ?」
「え?」
「ううん、なんでもない」
頬を赤くして呟く彼女の言葉に、こちらの方が勘違いしそうになってしまう。俺は頭を振って雑念を払い、るあきさんと共に長い列へ混ざる。作品について語り合っていると、いつの間にか入場の順番が来た。
メニュー表を眺め、ドリンクやフード、デザートをいくつか注文して行く。そして頼んだ品が来るまでの間に、るあきさんと店内にあるキャラクターの等身大パネルを写真に納めて行った。
目を輝かせてスマホを構える彼女に、俺はそっと声を掛ける。
「るあきさんの最推しっすよね。俺ツーショット撮りますよ」
「え!良いの!?」
るあきさんの嬉しそうな声が店内に響き渡る。彼女は周りに小さく頭を下げながら、最推しの隣に移動した。
なるほど。見覚えのあるコーディネートは、最推しのビジュアルを模したものだったらしい。
「待って、ちょっと待って…前髪とか直したい…」
スマホの画面を鏡代わりにして前髪を整えるるあきさんを、俺は自分のスマホを構えて眺める。
「OK、ごめん、お願いします」
「はい、さっきより更に可愛くなったっす。じゃあ撮りまーす」
「ちょっと待って、ねぇ、ちょっと待って?」
「ん、もっかいチェックします?最推しとのツーショはベストな自分で撮りたいっすよね」
るあきさんは慌てながらストップを掛けた。念の入りようが素晴らしい。
「そう、だね。それもあるけどちょっと……うん、一回私も落ち着くね」
るあきさんはゆっくりと深呼吸をした。最推しが隣に居て緊張する気持ちはめちゃくちゃ分かる。
そんなこんなで無事に撮影を終え席に戻ると、丁度頼んだメニューが届いた。
「わぁ、どれも美味しそう!」
「一話で食べてたこれとか、再現度高いっすね!」
作品やキャラクターをモチーフにしたメニューは、なんともオタク心を擽る。
るあきさんは鞄からアクリルスタンドを取り出し、テーブルに並べて再び撮影を始めた。そんな彼女の手元に視線が留まる。
「あ、ごめんね。早く食べたいよね」
「いや…その爪ってもしかして、最推し概念ネイルってやつすか?」
細やかな装飾がされたるあきさんの指先を差すと、彼女は嬉しそうに手を揃えて俺に向けた。
「そうそう、よく気付いたね!」
「細かい要素も拾ってて、見てて面白いっすね。今日の服とも合っててめちゃくちゃ可愛いっす!」
「ほんと待って……」
概念コーデに概念ネイル。最推しへの愛が伝わり微笑ましい。
目元の色味を見るにメイクも恐らく最推し概念だと思うが、彼氏でもないのにそこまで気付く男は流石に気持ち悪いだろうか……。
「ありがとう、一郎くん。そう言ってもらえると、頑張った甲斐があるかも」
メイクについても言及するか迷っていると、るあきさんが笑顔で言った。そして彼女は撮影を終えたスマホを仕舞い、メニューを頼むと貰えるランダム封入のカードを開けた。
「あ、この子かぁ」
リアクションから察するに、るあきさんは推しでは無いキャラクターが当たったらしい。
自分の推しを当てたい気持ちは勿論あるが、此処は俺が彼女の最推しを引き当て、格好良くプレゼントするのが最高にクールなのでは?
俺は呼吸を整えカードを開封した。
「よし!るあきさんの最推し!」
見事に引き当て、そのままるあきさんにカードを手渡す。
「良いの?貰っちゃって」
「推してる人の元に居た方がキャラも嬉しいっすよ」
そんな格好付けた事を言い、俺はるあきさんの嬉しそうな笑顔を眺める。
「一郎くん、神?」
拝んでおこう、とるあきさんは俺に向かって両手を合わせる。予想外の行動に、思わず笑ってしまった。
そして頼んだメニューを完食し、俺達はコラボカフェを後にする。
「何処か行きたい所ってあったりします?良かったらおすすめの、るあきさんと行きたいなって思ってた所があるんすけど」
俺を見上げるるあきさんにそう言うと、彼女は楽しそうに頷いた。
「じゃあ、折角だしそこに行こう。楽しみ」
わくわくとした表情を浮かべたその瞬間、彼女はすぐにまた目を泳がせ顔を赤くする。
「…どうかしました?るあきさん、顔赤いっすけど」
俺の事を意識してくれての反応ならめちゃくちゃ嬉しい。俺はわざと、彼女にそんな指摘をしてみたのだった。
─ END ─
【あとがき】
夢主視点のこちらもどうぞ。
▶推しにときめいていたはずがいつの間にか一郎の事で頭がいっぱいになっていた話
2025/01/17
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