Dream
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友人との待ち合わせに急いで来たが、スマホを見るとその友人から「少し遅れる」とのメッセージが届いていた。わざわざ走って来たのにこれか…と心の中で愚痴をこぼすが、そもそも寝坊した私も普通に悪い。
乱れた息を整えながら、「気にしないでゆっくり来て」と返信する。そしてスマホを鞄に仕舞い、別のポケットを探って煙草を取り出した。
走って疲れて水分補給よりも先にニコチン補給だなんて我ながら中毒者だな…と自嘲し、箱から一本抜く。そのまま口に咥えて、ライターを探す為再び鞄をあさった。
「え、嘘。忘れちゃった?」
急いで家を出て来たからか、うっかりライターを入れ忘れてしまったらしい。
煙草があっても火が着かないと意味が無い。味も無い。どうする事も出来ない。
私は溜息をついて煙草を箱に戻した。普段はあまり感じないが、吸えないとなると途端にストレスが私を襲う。
何も考えないよう目の前の景色に集中した矢先に、ふと隣の方から煙草の匂いがした。
「すみません、お兄さん。良かったら火貸してくれません?」
我慢出来ず、少し離れた位置で紫煙をくゆらせているお兄さんに声を掛けた。
「あ?」
低い声で凄まれ驚いた後、そのお兄さんの顔を見て更に驚く。
「え!?MAD TRIGGER CREWの…!」
碧棺左馬刻!
開いた口が塞がらずパクパクと魚のような反応をしていると、左馬刻さんは眉間に皺を寄せ鬱陶しそうな表情を見せた。
「…なんだよ?」
「えぇと…煙草吸おうとしたらライター忘れたみたいで、良ければ火を貸して頂けないかと…」
こんなお願いをして、私はヨコハマの海に沈められたりしないだろうか…。決して長くはない人生だったが、喫煙している身としてはいつ死んでもおかしくはないだろう。最期に一本吸いたかったな…。
煙草を吸っている自分しか現れない走馬燈を見ていると、目の前にシルバーのジッポが差し出された。
「おらよ」
「あ!ありがとうございます!」
慣れないジッポに手間取りつつも、煙草に火を着け思い切り吸い込む。
「はぁ…生き返る…」
ストレス社会で唯一の至福のひとときだ。
こんなにあっさり貸してくれるとは思わず、内心驚きながら左馬刻さんにジッポを返却する。
「喫煙者に悪い人は居ないですね」
そう言い左馬刻さんを見上げると、鼻で笑われた。
「大袈裟過ぎんだろ」
その何処か優しい笑顔に、胸の奥が苦しくなる。煙草の所為では無い、恋に落ちた時の切ない苦しさだ。
彼の笑顔に釘付けになっていると、私を現実に引き戻すかのように大きな着信音が響く。
「おう。…分かった、今向かうわ」
左馬刻さんはスマホを耳にあて、相手と一言二言交わすと通話を終えた。そしてスマホを仕舞ったその手で携帯灰皿を取り出し、吸っていた煙草を押し入れ私に向かって呟く。
「俺様はもう行くわ」
「はい、ありがとうございました」
彼と別れた直後に、私のスマホもメッセージの通知音を響かせた。待ち合わせ場所に友人が到着したらしい。
左馬刻さんから貰った火が灯る煙草を、勿体無いと感じつつ携帯灰皿に押し込む。
待ち合わせ場所に向かって友人と合流すると、「何ニヤついてんの」と怪訝な顔をされた。
「聞いて、私ライター忘れちゃってさ、火借りたんだけど、その人私のハートにも火着けてった」
そんな浮かれた事を言って、自分でも笑ってしまう。
「何それ、恋バナ?」
「気になる?適当にカフェとか入って語ろう。てか語らせて」
近くのカフェに入り、事の顛末を話す。あの時吸った煙草が人生で一番美味しく感じたのだった。
─ END ─
【あとがき】
2024/08/31
乱れた息を整えながら、「気にしないでゆっくり来て」と返信する。そしてスマホを鞄に仕舞い、別のポケットを探って煙草を取り出した。
走って疲れて水分補給よりも先にニコチン補給だなんて我ながら中毒者だな…と自嘲し、箱から一本抜く。そのまま口に咥えて、ライターを探す為再び鞄をあさった。
「え、嘘。忘れちゃった?」
急いで家を出て来たからか、うっかりライターを入れ忘れてしまったらしい。
煙草があっても火が着かないと意味が無い。味も無い。どうする事も出来ない。
私は溜息をついて煙草を箱に戻した。普段はあまり感じないが、吸えないとなると途端にストレスが私を襲う。
何も考えないよう目の前の景色に集中した矢先に、ふと隣の方から煙草の匂いがした。
「すみません、お兄さん。良かったら火貸してくれません?」
我慢出来ず、少し離れた位置で紫煙をくゆらせているお兄さんに声を掛けた。
「あ?」
低い声で凄まれ驚いた後、そのお兄さんの顔を見て更に驚く。
「え!?MAD TRIGGER CREWの…!」
碧棺左馬刻!
開いた口が塞がらずパクパクと魚のような反応をしていると、左馬刻さんは眉間に皺を寄せ鬱陶しそうな表情を見せた。
「…なんだよ?」
「えぇと…煙草吸おうとしたらライター忘れたみたいで、良ければ火を貸して頂けないかと…」
こんなお願いをして、私はヨコハマの海に沈められたりしないだろうか…。決して長くはない人生だったが、喫煙している身としてはいつ死んでもおかしくはないだろう。最期に一本吸いたかったな…。
煙草を吸っている自分しか現れない走馬燈を見ていると、目の前にシルバーのジッポが差し出された。
「おらよ」
「あ!ありがとうございます!」
慣れないジッポに手間取りつつも、煙草に火を着け思い切り吸い込む。
「はぁ…生き返る…」
ストレス社会で唯一の至福のひとときだ。
こんなにあっさり貸してくれるとは思わず、内心驚きながら左馬刻さんにジッポを返却する。
「喫煙者に悪い人は居ないですね」
そう言い左馬刻さんを見上げると、鼻で笑われた。
「大袈裟過ぎんだろ」
その何処か優しい笑顔に、胸の奥が苦しくなる。煙草の所為では無い、恋に落ちた時の切ない苦しさだ。
彼の笑顔に釘付けになっていると、私を現実に引き戻すかのように大きな着信音が響く。
「おう。…分かった、今向かうわ」
左馬刻さんはスマホを耳にあて、相手と一言二言交わすと通話を終えた。そしてスマホを仕舞ったその手で携帯灰皿を取り出し、吸っていた煙草を押し入れ私に向かって呟く。
「俺様はもう行くわ」
「はい、ありがとうございました」
彼と別れた直後に、私のスマホもメッセージの通知音を響かせた。待ち合わせ場所に友人が到着したらしい。
左馬刻さんから貰った火が灯る煙草を、勿体無いと感じつつ携帯灰皿に押し込む。
待ち合わせ場所に向かって友人と合流すると、「何ニヤついてんの」と怪訝な顔をされた。
「聞いて、私ライター忘れちゃってさ、火借りたんだけど、その人私のハートにも火着けてった」
そんな浮かれた事を言って、自分でも笑ってしまう。
「何それ、恋バナ?」
「気になる?適当にカフェとか入って語ろう。てか語らせて」
近くのカフェに入り、事の顛末を話す。あの時吸った煙草が人生で一番美味しく感じたのだった。
─ END ─
【あとがき】
2024/08/31
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