Dream
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「さってと、そろそろ夕飯の仕度でもしますかね〜」
出勤前の夕方。俺っちは愛するベストフレンドフォーエバー独歩の為に、夕飯の準備に取り掛かった。
冷蔵庫から取り出した食材を並べ、鼻歌混じりにそれらの下処理を始める。
「独歩の奴、今日は何時に帰って来んのかな〜」
包丁を握り、リズムよく野菜を切っていく。
社畜として頑張り過ぎている幼馴染みの為に、俺っちは毎日栄養や美味しさを考えて料理をしているのだ。
独歩は今日どんな愚痴を吐きながら帰宅するのだろう。
そんな事を思っていると、玄関の扉が開く音が聞こえた。
「ただいま」
「おっかえり〜!珍しく早いな〜」
もそもそとネクタイを緩めながらダイニングチェアに腰をおろした独歩に声を掛ける。
「そうなんだよ…珍しく定時上がり…明日は大雪かも知れない…」
定時に上がって盛大な溜息をつく人間は、恐らくこの超ネガティブ人間のちゃんどぽだけだろう。
「雪降らすならクリスマスだけにしてくれよな〜」
そんな軽口を叩いて調理を再開した時、独歩は「そうだ」と口を開いた。
「今日昼に立ち寄った店で、黒椿に会ったんだよ。お前覚えてるか?」
「黒椿…ってもしかしてるあきちん!?小中一緒だった!」
覚えていない訳がない。
るあきちんは数人の女子グループの中に居て、俺っち達が馬鹿やってるとそれを見て笑っていたり、家の方向が同じで朝会うと一緒に登校したりしていた。
近過ぎず遠過ぎないそれくらいの関係性で、卒業以来会っていない。
「ああ。向こうが俺に気付いたみたいで、声掛けて来たんだ。最初は誰だか分からなかったよ」
「へぇ〜。どんな話したん?」
「昔と全然変わらないね、とか。麻天狼応援してるよ、とか…」
確かに独歩ちんは全然昔と変わらない。学生時代の親友を思い出して、ちょっと笑ってしまった。
そして独歩は溜息をついて続ける。
「あと、二人はずっと仲良いんだね、とも言われた」
「え〜溜息つくとこじゃなくね!?」
あの頃からずっと仲が良いのは事実ではないか!
病める時も健やかなる時も…って表現するのは少し違うかも知れないが、もう20余年、色々な思い出を共有して来た。
しかし、実は今まで独歩には秘密にしていた事もある。
それは件の黒椿るあきちんの事だ。
何を隠そう、彼女はこの伊弉冉一二三の初恋の相手なのである!
恥ずかしくて親友にさえ打ち明けられなかった事だ。当然本人にも伝える事無く現在に至る。
「連絡先も交換して、その流れで一二三も一緒に今度三人で食事でもどうかって誘われたんだが…」
「あ〜…。ジャケット着てってイメチェンしたって感じで通せるかな〜」
ははは、と努めて明るく笑ってみせる。
ジャケットを着た自分を『偽りの自分』だとは思わないが、あの頃と同じように会えないのは寂しい。思わず心の中で深い溜息をついた。
「…まぁ仕事忙しいし、すぐには難しいかもとは答えたけど」
独歩のやつは、少しだけ悲しそうな顔をした。
「そんなしょぼくれた顔すんなよ独歩〜。腹ぺこでテンション落ちた的な?俺っちがぱぱっと作ってやっから、もーちょい待ってな!」
俺っち相手に気を遣う風な独歩に、そうとぼけてみたりする。
そして出来上がった料理をテーブルに置くと、独歩はやっと笑顔を見せた。
「んじゃー俺っちは仕事行って来るぜい」
ジャケットを羽織って玄関を出る。
淡い気持ちを抱いて、その日は少し遠回りをして仕事場に向かった。
─ END ─
【あとがき】
タイトルは「花曇」様よりお借りしました。
▶始まりはきみ─DOPPO
2024/06/23
出勤前の夕方。俺っちは愛するベストフレンドフォーエバー独歩の為に、夕飯の準備に取り掛かった。
冷蔵庫から取り出した食材を並べ、鼻歌混じりにそれらの下処理を始める。
「独歩の奴、今日は何時に帰って来んのかな〜」
包丁を握り、リズムよく野菜を切っていく。
社畜として頑張り過ぎている幼馴染みの為に、俺っちは毎日栄養や美味しさを考えて料理をしているのだ。
独歩は今日どんな愚痴を吐きながら帰宅するのだろう。
そんな事を思っていると、玄関の扉が開く音が聞こえた。
「ただいま」
「おっかえり〜!珍しく早いな〜」
もそもそとネクタイを緩めながらダイニングチェアに腰をおろした独歩に声を掛ける。
「そうなんだよ…珍しく定時上がり…明日は大雪かも知れない…」
定時に上がって盛大な溜息をつく人間は、恐らくこの超ネガティブ人間のちゃんどぽだけだろう。
「雪降らすならクリスマスだけにしてくれよな〜」
そんな軽口を叩いて調理を再開した時、独歩は「そうだ」と口を開いた。
「今日昼に立ち寄った店で、黒椿に会ったんだよ。お前覚えてるか?」
「黒椿…ってもしかしてるあきちん!?小中一緒だった!」
覚えていない訳がない。
るあきちんは数人の女子グループの中に居て、俺っち達が馬鹿やってるとそれを見て笑っていたり、家の方向が同じで朝会うと一緒に登校したりしていた。
近過ぎず遠過ぎないそれくらいの関係性で、卒業以来会っていない。
「ああ。向こうが俺に気付いたみたいで、声掛けて来たんだ。最初は誰だか分からなかったよ」
「へぇ〜。どんな話したん?」
「昔と全然変わらないね、とか。麻天狼応援してるよ、とか…」
確かに独歩ちんは全然昔と変わらない。学生時代の親友を思い出して、ちょっと笑ってしまった。
そして独歩は溜息をついて続ける。
「あと、二人はずっと仲良いんだね、とも言われた」
「え〜溜息つくとこじゃなくね!?」
あの頃からずっと仲が良いのは事実ではないか!
病める時も健やかなる時も…って表現するのは少し違うかも知れないが、もう20余年、色々な思い出を共有して来た。
しかし、実は今まで独歩には秘密にしていた事もある。
それは件の黒椿るあきちんの事だ。
何を隠そう、彼女はこの伊弉冉一二三の初恋の相手なのである!
恥ずかしくて親友にさえ打ち明けられなかった事だ。当然本人にも伝える事無く現在に至る。
「連絡先も交換して、その流れで一二三も一緒に今度三人で食事でもどうかって誘われたんだが…」
「あ〜…。ジャケット着てってイメチェンしたって感じで通せるかな〜」
ははは、と努めて明るく笑ってみせる。
ジャケットを着た自分を『偽りの自分』だとは思わないが、あの頃と同じように会えないのは寂しい。思わず心の中で深い溜息をついた。
「…まぁ仕事忙しいし、すぐには難しいかもとは答えたけど」
独歩のやつは、少しだけ悲しそうな顔をした。
「そんなしょぼくれた顔すんなよ独歩〜。腹ぺこでテンション落ちた的な?俺っちがぱぱっと作ってやっから、もーちょい待ってな!」
俺っち相手に気を遣う風な独歩に、そうとぼけてみたりする。
そして出来上がった料理をテーブルに置くと、独歩はやっと笑顔を見せた。
「んじゃー俺っちは仕事行って来るぜい」
ジャケットを羽織って玄関を出る。
淡い気持ちを抱いて、その日は少し遠回りをして仕事場に向かった。
─ END ─
【あとがき】
タイトルは「花曇」様よりお借りしました。
▶始まりはきみ─DOPPO
2024/06/23
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