出会い
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意志、決断、責任、思想、そして人生すらも。私にとっては紙面上の言葉だった。
あの人に、会うまでは
両親は私に、何も望んではいなかった。国の端にある小さな村。ありふれた夫婦。その3人目の子供が私。
家事を取り仕切る姉がおり、力仕事を担う兄がいた。すでに満ち足りた家族の中で、私は特に何も求められなかった。
「国民は可愛いね。いっぱいお食べ」
「お姉ちゃんのもあげる」
「俺の作ったおもちゃやるよ」
ぬるま湯のような家族の中で、私はぼんやりと過ごしていた。
両親と年の離れた兄弟は、共に畑仕事があるため昼間は子育ての時間がない。その為、託児所に預けられた。大人はご飯の時間以外は好きに遊ばせてくれる。しかし、生まれた時期が悪かったのか、女の子はおらず年上の男の子ばかりだった。戦争ごっこに戦い、ケンカ。そんな中で、幼く力もない私に遊びの声はかからない。たまに遊んでも、ケガをしたり、それで相手の子が怒られたり…。面倒な事ばかりだ。自然と、地面に絵を描くことが多くなる。つまらない日々だった。
ある日、村に旅人が来た。首都に帰る途中の貴族様がお忍びで来たんじゃないかって大人は噂してたけど。私にとっては、ただのおじさんだった。託児所の私達に、文字を教えてくれようとする変なおじさん。
「おじさん、どう?」
「上手くかけてるね。きちんと読めるよ」
もともとじっとしている習慣のなかった男の子達はすぐに遊びに戻ってしまったが、私は絵の延長線としていくつも字を覚えた
「すごいね、これでほとんどの本は読めるんじゃないかな?」
「ほん?絵本じゃなくて?」
「あぁ、この村にはあまりないけど。文字ばかり並んでる本があるんだよ。そこには、世界中の人達が自分の考えていることを載せている」
「…ほん」
世界中の人達。そんなこと、考えたこともなかった。私にとってはこの村が全部で、それ以外は知らなくて…
「…君が興味を持ったなら、僕の本を少し置いていくよ。どの道、荷物になって重かったところだし」
その時の私がどんな顔をしていたのかは分からないが、おじさんはそう提案してきた。そして、幼い私には不似合いな分厚い本が、私のおもちゃ箱に入ることになったのだ。
あの人に、会うまでは
両親は私に、何も望んではいなかった。国の端にある小さな村。ありふれた夫婦。その3人目の子供が私。
家事を取り仕切る姉がおり、力仕事を担う兄がいた。すでに満ち足りた家族の中で、私は特に何も求められなかった。
「国民は可愛いね。いっぱいお食べ」
「お姉ちゃんのもあげる」
「俺の作ったおもちゃやるよ」
ぬるま湯のような家族の中で、私はぼんやりと過ごしていた。
両親と年の離れた兄弟は、共に畑仕事があるため昼間は子育ての時間がない。その為、託児所に預けられた。大人はご飯の時間以外は好きに遊ばせてくれる。しかし、生まれた時期が悪かったのか、女の子はおらず年上の男の子ばかりだった。戦争ごっこに戦い、ケンカ。そんな中で、幼く力もない私に遊びの声はかからない。たまに遊んでも、ケガをしたり、それで相手の子が怒られたり…。面倒な事ばかりだ。自然と、地面に絵を描くことが多くなる。つまらない日々だった。
ある日、村に旅人が来た。首都に帰る途中の貴族様がお忍びで来たんじゃないかって大人は噂してたけど。私にとっては、ただのおじさんだった。託児所の私達に、文字を教えてくれようとする変なおじさん。
「おじさん、どう?」
「上手くかけてるね。きちんと読めるよ」
もともとじっとしている習慣のなかった男の子達はすぐに遊びに戻ってしまったが、私は絵の延長線としていくつも字を覚えた
「すごいね、これでほとんどの本は読めるんじゃないかな?」
「ほん?絵本じゃなくて?」
「あぁ、この村にはあまりないけど。文字ばかり並んでる本があるんだよ。そこには、世界中の人達が自分の考えていることを載せている」
「…ほん」
世界中の人達。そんなこと、考えたこともなかった。私にとってはこの村が全部で、それ以外は知らなくて…
「…君が興味を持ったなら、僕の本を少し置いていくよ。どの道、荷物になって重かったところだし」
その時の私がどんな顔をしていたのかは分からないが、おじさんはそう提案してきた。そして、幼い私には不似合いな分厚い本が、私のおもちゃ箱に入ることになったのだ。
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