焦げ臭い香りと共に目の前に出されたものを見て、俺は言葉を失った。毒でも入っているような液体は、なぜか気泡が沸いては弾けてを繰り返している。白い何かの欠片が浮き沈みをしているが、その正体は掴めない。
　そんなダークマターを差し出した彼女は、眩しいくらいに輝く笑顔だ。
「はい、召し上がれ」
　にこり、と。悪意の全くないかわいらしい笑みをこちらに向けた。彼女の表情とは裏腹に、俺の顔からは血の気が引いていく。
「なんだ、これは……」
　掠れた声でようやく絞り出した言葉に、彼女は首をかしげた。
「なにって、特製のうどんだよ」
　見てわからないの？ と不満げに言っているが分かるわけがない。そもそも食べ物かすら怪しいと俺は思うのだが。
「普段は料理なんてしないんだけど、君のために頑張ったんだよ！ うどん好きだったよね？」
　尋ねてくる彼女に頷くことはできなかった。確かに好物ではあるが、俺はこんなものは口にしたくない。
　ダークマターから逃れるための言い訳を考えている隙に、口のなかに何かが突っ込まれた。
　非常に、形容しがたい、妙な感覚がした。
「どう？ 美味しい？」
　無邪気な彼女に対して、俺の頭痛は治まる気配を知らない。


END