日本の中心東京……とは思えない自然豊かかつ、神社だか寺院だかのなんだか厳かな雰囲気漂う建物のある敷地。そんな東京都立呪術高等専門学校に仙台から虎杖がやってきた少し後。
「おー……ここかな」
立派な門構えを前に、一人の少年が立っていた。ジーンズに、白いTシャツと非常にラフな格好で、この場には似つかわしくない。荷物も小さなショルダーバッグ一つだけ。
そんな少年は、意気揚々と敷地に足を踏み入れた。堂々としているので、ごく稀にすれ違う人は一瞬首を傾げるがすぐに興味を無くす。
「お疲れ様でーす！」
「えっ！？…お疲れ様です？」
偶然すれ違った伊地知も、この見知らぬ少年を一度そのまま受け入れかけて、全然記録にない人物では。と慌てて少年を呼び止める。
「あ、あの！どちら様で？」
「お邪魔してます！不法侵入者です！」
「えっ！？」
あっさり白状、というよりも自己紹介をした少年に驚く伊地知。その驚き固まっている間に、ではまた！と少年は走り出してしまった。慌てて手を伸ばすも、相手はあっという間に遠くなってしまう。
途方にくれそうになった伊地知はスマホを取り出し、いまなら敷地内にいるであろう人物に電話をかけた。なにやってんの。とからかわれるかもしれないが、緊急事態だ。
「ご、五条さんー！」
伊地知の情けない声が静かな辺りに響いた。